11月8日~9日に鈴鹿サーキットで開催された全日本選手権スーパーフォーミュラ第7戦。決勝日はあいにくの天候となったが、この週末スーパーフォーミュラSF14のシャシーマニュファクチャラーである、ダラーラ・アウトモビリの創始者ジャンパオロ・ダラーラが鈴鹿サーキットを訪れた。
今季、スーパーフォーミュラはトヨタ、ホンダの2リッター直4直噴ターボエンジンの導入とともに、新シャシー・ダラーラSF14を導入した。フォーミュラカーらしくドライバーの技術を存分に発揮できるようにと“クイック&ライト”というコンセプトの下、JRP日本レースプロモーションとダラーラ、両メーカーがともに作り上げたSF14は、F1をも上回るコーナリングスピードを実現。ドライバーからも絶賛されている。
●ジャンパオロ・ダラーラもSF14の出来映えに満足
そんなSF14を開発したのが、イタリアのシャシーコンストラクターであるダラーラ。世界中のレースでワンメイクシャシーを製作する実績をもつが、そのダラーラ・アウトモビリの創始者ジャンパオロ・ダラーラと、SF14を担当したルカ・ピニャータというふたりが最終戦鈴鹿を訪問した。
「日本に来るのは初めてのことだ。ファンタスティックな国で、素晴らしい体験をしているよ。鈴鹿サーキットに来る前にいろいろな場所に寄ったが、日本についてさまざまなことを知ることができた。今からまた改めて日本に来たいと思っているんだよ」と、鈴鹿でメディアに対して答えたジャンパオロ・ダラーラ。
「実際に全車が走っているシーンは今朝(予選日)初めて見た。見た目も美しく、いいマシンになったと喜んでいる。チームの皆さんもドライバーもいずれもレベルが高いと感じることができた」
「このSF14は、1台あたりの年間予算は80万ユーロ(約1億1000万円)だ。トップレベルの予算のマシンの2%のコストでしかないにも関わらず、速さではF1に対して4%しか劣っていない。これは驚嘆すべきことだろう。エンジンマニュファクチャラーの皆さんの努力もあるが、非常に誇りに思っている」
実際、F1チームの予算は2013年でレッドブルが2億8000万ユーロ(約398億円)、メルセデスは最高額2億9000万ユーロ(約412億円)と言われる。スーパーフォーミュラで2台体制を敷けば2億円以上になるが、F1と比較すると興味深い数字だろう。
「また、チームの皆さんからのマシンの性能や信頼性に対する評価、メディアやドライバーからも高い評価をいただいているのにも喜んでいる。特にマニュファクチャラーとしては、全体的な性能のバランスもそうだし、良いプロダクトを提供できファンの皆さんにレースの面白さも提供できたと思う。誇りに思っているよ」
●チーフデザイナーが明かすSF14開発秘話
そんなダラーラ本人も満足するSF14について、設計を担当したピニャータは、SF14の“開発秘話”を披露してくれた。
「我々はこのSF14をデザインする時に、過去のダラーラの経験をすべて注ぎ込んだ。現代で最も進化したフォーミュラカーとして完成したのがSF14なんだ。また、新たな試みとしてふたつのことを行った」とピニャータは言う。
「ひとつは、ボディワークにイタリアンデザインを採用して、見た目の良さも追求している。また、開発する段階でドライビングシミュレーターで得られた結果を盛り込んでいるんだ。このふたつはダラーラにとって初めてのことだった」
SF14は、2012年にダラーラへのオーダーが決定され、2013年7月に富士で初走行した。その開発段階である13年1月には、当時トヨタ、ホンダの両メーカーで開発ドライバーとして決定していた中嶋一貴、伊沢拓也のふたりがイタリアのダラーラ本社を訪れ、シミュレーターをドライブ。ダラーラのエンジニアたちにフィードバックしていた。
「シミュレーターを使うことで、タイヤやステアリングの入力などを盛り込んで設計することができた。このために、中嶋サンや伊沢サンに、クルマができあがる1年以上前にイタリアに来てもらい、シミュレーターをドライブしてもらったんだ」
また、ジャンパオロ・ダラーラは、このシミュレーターを使うことはダラーラにとって新しい経験だったと強調する。
「シミュレーターに関して言えば、これまでパーツのデザインを失敗することもあった。インディカー用シャシーでは、サスペンションアームをプロダクトとして全チームに発送してしまった後に問題点が見つかったことがあった」とダラーラは言う。
「シミュレーターでテストすることで、データを反映してから導入することができたので、設計は非常に優れたものになった。SF14により、ダラーラは貴重なステップを踏むことができたんだ」
●鈴鹿に登場した、ダラーラを物語る2台
今回のスーパーフォーミュラ第7戦鈴鹿では、ふたりの来日を記念してさまざまなイベントが開催された。予選日夜に開催されたパーティでは、ジャンパオロ・ダラーラが開発を担った名車ランボルギーニ・ミウラが展示されたほか、ホンダが第3期参戦開始に製作したテストカー、RA099が展示され、ふたりは名車との再会に目を細めた。
「ラウンジに展示されているクルマたちを見て、センセーショナルな経験をすることができた。特にランボルギーニ・ミウラは私の50年以上のキャリアの中でも、最も重要なクルマの1台だ。今の時代であったら、あれほど技術的に旺盛なことはできなかっただろう」とダラーラ。
会場には、JLOC(ジャパン・ランボルギーニ・オーナーズクラブ)の則竹功雄会長をはじめ、ランボルギーニファンも多数訪れた。また、ホンダRA099はデザインに携わったピニャータに加え、ホンダF1第2期でエンジン開発に携わったJRP白井裕社長も出席した。
このRA099についてピニャータは、「私はホンダRA099に関してはティム・デンシャムとともに仕事をすることになったんだ。今回、ひさびさに自分が担当したクルマを見ることができて感動しているよ」と語った。
「あのRA099を作ったことで、本当にさまざまな経験を積むことができた。そしてこの経験は後にダラーラが作るワールドシリーズ・バイ・ニッサン、GP2、フォーミュラ・ルノー3.5、そしてスーパーフォーミュラSF14に続く、技術的なベースになっているんだよ」