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F1現地直送:アロンソがマクラーレンへ突きつけた条件とは?

2014年11月12日 12:30  AUTOSPORT web

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アロンソとともに、レースエンジニアのアンドレア・ステラもマクラーレン移籍との報道も出ている。チーム・アロンソ計画は着々と進行しているのだろうか
レッドブルが10月4日にセバスチャン・ベッテルの離脱を発表して動き出した2015年のストーブリーグ。だが、そこから動きがパッタリと止まってしまった。理由はフェルナンド・アロンソが沈黙を貫いているからである。当初この沈黙はフェラーリと2016年まで結んでいる契約の解除をめぐる違約金をどちらが払うかが原因ではないかと思われていたが、フェラーリに近い者の情報によれば、フェラーリとアロンソとの間では違約金なしで早期に契約を解除することで10月31日に合意に脱したという。つまり、アロンソが選択すべき道は、マクラーレン・ホンダしかない。しかし、ブラジルGPでアロンソは次のように語っていた。

「最終的に判断するのは、私だ。もしフェラーリにいるのなら、過去5年間やっていたように常にベストを尽くしていくだけだし、もしどこか違うチームに行くとしたら、より良い選択をするまでだ。(フェラーリを離れるというのは簡単な決断ではなく)フェリペ(マッサ)も昨年は同じ気持だったと思うけど、今はポールポジション争いに絡んでいるんだからね」

 と、フェラーリ離脱をほのめかす発言をしているにもかかわらず、なぜいまだにアロンソはフェラーリ離脱およびマクラーレン・ホンダ入りを明言しないのかだろうか。そこにはロン・デニスの存在が影響していると考えられる。ただし、それはアロンソとデニスの個人的な人間関係の話ではない。デニスが構想するチームのビジョンに明確さがないことにアロンソは不満だと、ある情報筋は言う。その代表的な例が、マクラーレンのチーム代表不在である。

 マクラーレンは今年デニスの後を継いだマーティン・ウィットマーシュが職を解かれ、エリック・ブーリエが後任に就いている。しかし、ブーリエの役職は代表ではなく、レーシングディレクターだ。しかもパドックでのブーリエの評判は決して良くない。ブーリエが昨年まで所属していたロータスのある関係者は「彼が出ていって良かった」とさえ言う。アロンソには、かつて所属していたロータス(元ルノー)に強いパイプがあることから、アロンソが「ブーリエでは力不足」と感じても不思議はない。過去アロンソがチャンピオンを獲得した2回は、いずれもルノーで勝ち獲ったもの。当時のチーム代表はフラビオ・ブリアトーレで、いかにF1の世界で政治力が大切かということは痛感しているはずだ。

 ちなみに、その情報筋は「なぜマクラーレンがサム・マイケルをウイリアムズから採ったのか理解できない」と言っていたが、マイケルは10月に今シーズン限りでマクラーレンを離脱することが発表された。これからマクラーレンが新しいチーム代表を決定すれば、ブーリエがマクラーレンを追われることは間違いないだろう。最近ブーリエが、あちこちのチーム首脳陣と話し合っているのは奇妙な偶然だろうか。

 さて、それではマクラーレンの新チーム代表は誰になるのだろうか。まず、デニスという声があるが、これはアロンソが望んでいない。そこでマクラーレンの株式を持つ三者が挙げている候補が、以下の3人だ。ひとりは前チーム代表のウィットマーシュ。もうひとりが、かつてマクラーレンをドライブしていたゲルハルト・ベルガー。最後のひとりが、現在レッドブルの代表を務めるクリスチャン・ホーナーである。

 匿名の情報筋が筆者に語ったところによると「ベルガーはチーム代表ではなく、現在のメルセデスにおけるニキ・ラウダ的な存在(非常勤会長)という形でなら参画する可能性がある。したがって、マクラーレンはウィットマーシュかホーナーのいずれかを起用する方向で今週、株主が緊急会議を行うことになっている」と言う。

 3人の株主とは、バーレーンの王室が所有するバーレーン・マムタラカット・ホールディングス(BMH)、マンスール・オジェ、そしてデニスだ。デニスはアロンソ側の要求に難色を示しているが、すでにアロンソ側からBMHとオジェには話が通っている。BMHはマクラーレンの株式を50%持つ筆頭株主で、オジェも25%を所有しているため、25%しか持っていないデニスは要求を飲むしかないと言われている。

 しかし、それはマクラーレンの事情であって、ベルガーもしくはウィットマーシュかホーナーいずれかをチーム代表として起用できる保証はまだない。アロンソが沈黙を守っているのはそのためで、チーム改革が実現しなければ移籍はしないというアピールなのだ。そして、マクラーレンにプレッシャーをかけるために、フェラーリとは「マクラーレン行きを発表するまで、フェラーリもベッテル起用を発表しない」ということで手打ちができている。

 そして、ホンダを通してマクラーレンへプレッシャーをかけていることから、アロンソがマクラーレンとではなく、すでにホンダと契約したという噂になったようだ。アロンソがアメリカGP後に「あっと驚く発表があるだろう」と語っていたのも、新しいチーム代表の件だと推測され、そう考えれば、ブラジルでアロンソが語っていた内容も納得がいく。

 アロンソのマクラーレン・ホンダ入りは確実だ。注目すべきは、マクラーレン・ホンダのチーム代表に誰が就くかである。

(尾張正博)