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F1ブラジルGP決勝分析(1):実は見た目以上に完勝だった? 冷静なロズベルグ

2014年11月10日 14:50  AUTOSPORT web

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ドイツGP以来久々の勝利を手にし、最終戦にチャンピオンの望みを繋いだロズベルグ
8戦ぶりにニコ・ロズベルグが勝利した今年のブラジルGP。今回の勝利で、自身初の王座獲得に望みを繋げました。

 ロズベルグの最大の勝因が、ハミルトンの28周目のスピンだったことに疑いの余地はありません。しかし、レースでのタイム差が示すほどの辛勝ではなかったように思います。レースを検証してみることにしましょう。

 ロズベルグは26周目終了時点に2回目のタイヤ交換を行うため、ピットに向かいます。対するハミルトンは、翌27周目にピットには入らずに最速タイムを記録し、28周目へ。しかしターン4でスピンし、タイムを大幅にロスして、この周の終わりにピットインします。

 ピットイン前には1.099秒だったふたりの差は、両者がタイヤ交換を終えた直後の29周目には7.460秒差に広がっています。もちろんこの差はハミルトンのスピンによって生じたものですが、この時のラップタイムを見ると、ちょっと気になることがありました。

 タイヤ交換を終えた直後のロズベルグのラップタイムは、ピットイン前とほとんど同じ。一方、ハミルトンはミスを挽回すべく、猛プッシュしてロズベルグを追います。ピットストップ前後は、順位を逆転する勝負所。勝負を仕掛けられる側は、その攻撃を阻止するために、必死の防戦をします。事実、最初のピットストップ後には、ペースアップしたハミルトンに反応して、ロズベルグもペースを上げています。

 一方、タイヤを長くもたせるためには、使い始めに気を使う必要があります。もし使い始めに無理をしてしまえば、そのタイヤの寿命を著しく縮めてしまうのです。これまでに、そういう事例を多く目撃してきました。

 ハミルトンがスピンして後退したことで、ロズベルグは走り始めにプッシュする必要性から逃れることができました。その結果、タイヤをしっかりと長持ちさせることに成功し、ハミルトンに直後まで迫られても、しっかりと防御する“余裕”を残して、周回を続けることができたのです。一方のハミルトンは、ロズベルグに追いつくのが精一杯。抜くまでの余力は、もはやありませんでした。

 レース後のコメントでロズベルグは、「スティント後半に向け、タイヤをセーブすることができた」と語っています。この時の余裕が、最終スティントでのハミルトンに対する防戦に生きていたと言えるのではないでしょうか?

 では、ハミルトンがスピンしていなかったとしたら、ロズベルグは勝つ事ができたのでしょうか? ハミルトンがあのスピンでロスした時間は、計算上は約8秒。ハミルトンのスピンが無ければ、ピットアウト時にロズベルグの前に出ていた可能性があります。ただこれは、ロズベルグがピットアウト直後にプッシュしなかった前提での話。ロズベルグはプッシュすれば、ハミルトンの先行を阻止することができていたでしょう。ただ、その後最後まで抑えきれたかどうかは、さすがに分かりませんが。

 次戦はいよいよ最終戦アブダビGP。チャンピオン争いの結末は、どのようになるのでしょうか? 現時点でハミルトンはロズベルグに対し17点のリード。2位以上に入れば無条件で王座獲得ですから、ハミルトン優勢なのは間違いありません。しかし、ロズベルグには最後の最後まで諦めず、素晴らしい戦いを見せてもらいたいものです。
(F1速報)