ブラジルGPの金曜、パドックで興味深い光景が見られた。エイドリアン・スーティルのマネージャーを務めるマンフレッド・ツィンマーマンとキミ・ライコネンのマネージャーであるスティーブ・ロバートソンが談笑していたのである。なぜ、これが興味深いのかというとロバートソンがマネージメントしているのはライコネンだけではなく、フェリペ・ナスールのマネージャーも務めているからだ。つまりツィンマーマンとロバートソン、ザウバーのシートを失った者と新たに得た者のツーショットということになる。
ふたりの談笑が終わったあと、まずロバートソンに筆者が「グッド・ジョブ」と言って握手を求めると、いつもはライコネン同様クールなロバートソンが満面の笑みで「ありがとう」と握手してきた。聞けば、ザウバーとの交渉はアメリカGPの最中に行われていたという。
そのあとスーティルのマネージャー、ツィンマーマンに話を聞いた。
「スティーブ(ロバートソン)は以前から友人だから、今回の件で、私たちの関係に問題は生じない。問題があるとすれば、ザウバーの対応だ。なぜなら、ナスールの契約について私たちが知ったのは、チームが発表したリリースだったんだからね。問題はそれだけではない。ザウバーはエイドリアンだけでなく、ギド(バン・デル・ガルデ)とも契約を結んでいるらしい。つまりザウバーは4人のドライバーと契約を結んでいることになる。さあ、これからどうなるかだ」
ツィンマーマンが強気なのとは対照的に、エステバン・グティエレスのマネージャーである兄のアンドレスと父親のロベルトは沈んでいた。ただし、ザウバーの発表に「驚いてはいない」(ロベルト)と言う。というのも「オースティンでザウバーと交渉したけれど、条件面での折り合いがつかず、最終的に合意に達しなかった。だから、彼らが今回このような発表を行うことは、ある程度想像していたし、恨んでもいない」とアンドレス。
グティエレスの兄アンドレスは「まだF1をあきらめてはいない。金額は言えないが、テルメックスからの支援はこれまで同様に継続される。だから、現時点でアメリカに戻ってレースすることは考えていない」という。
現在ザウバーでは同じチームに異なる未来を見ている者同士が肩を寄せ合って戦い、微妙な雰囲気が流れている。
(尾張正博)