国土の約7割が森林という日本。そのうち4割を占める人工林は伐採期に入っているが、海外からの安い木材に押され価格が下がり、伐採するだけでもコスト高になってしまう。
ところがいま日本の木材の高い品質が評価され、中国や韓国の富裕層向けの家具や棺桶として大人気で、注文が殺到しているほどだという。2014年11月4日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、林業を復活させる新たな取り組みを紹介していた。
海外に目を向ければ「需要がある」日本の木材
人工森林は、ただ木を植えておけばいいというわけではなく「間伐」が必要で、木が育った後に間引きして日光を入れ、残した木を太く育てる。これを怠ると土地が痩せ、土砂崩れなどの災害にもつながってしまう。人件費や税金がかかる割に儲けが少ない。
ただ2007年からロシアが輸出量を押さえたのを機に、余っていた日本の木材が注目されてきた。輸出量は昨年の倍、2年前から比べると10倍以上に増えているという。
日本の木材を海外に輸出しているSDプラン社長の進藤伍暉さんは、「日本が一番持っている資源。貴重な宝物だ」と語る。日本では売り先がない木材も、海外に目を向ければ需要があるという。
人口約1500人の岡山県西粟倉村は、「百年の森林構想」を掲げて林業で活気を取り戻している。一時は4人にまで減った託児所の子どもが、いまや27人にまで増えた。
この村では山林の所有者が森林の管理を村役場に委託し、森林組合が間伐。丸太を村で起業したベンチャー企業「西粟倉・森の学校」が買い取って、商品に加工・販売する。伐採から商品化まで全て村内で行う、全国でも珍しい取り組みだ。
このベンチャーを立ち上げた代表の牧大介さん(40)は、京都出身。大学院で昆虫を研究していたが、よく訪れる村が疲弊しているのを目にして、2005年に地域再生のコンサルタントになった。
移住者受け入れにも積極的「山村あっての林業」
「森の学校」の主力商品は、間伐材で作った工事不要の床張タイル。一枚1902円で、「使えば使うほど森が豊かになるという商品」だ。無印良品を展開する「良品計画」本社オフィスの一室でも採用された。本物のヒノキをつかったシンプルな家具も人気だ。
こうした取り組みに惹かれ、移住してくる若者が増え、木工会社「木工房ようび」をはじめ、村では若手ベンチャーが次々と起業している。それがまた若者たちを呼びよせ、移住者はこの5年間でおよそ50人になった。牧さんは、この村の未来についてこう語る。
「山村あっての林業であり、森である。森の可能性を引き出すチャレンジを生むため、移住者の受け入れもしっかりやる。結果として、林業と森を未来にしっかりつないでいく」
番組ではこのほか、東京の多摩地域などから採れた森林を「TOKYO WOOD」というブランドで売り出す動きを紹介した。加工は東京あきるの市の沖倉製材所が行い、天然乾燥で2カ月から半年以上かかるが、人工乾燥とは色つや、香り、強度が違うという。
検査義務はないが、厳密な検査によってブランド化して、東京小金井市の小嶋工務店が売り出し、施工を手掛ける。通常の住宅よりも12万円割高になるが、モデルハウスや青梅市の森林を見学した客のひとりは、「あれだけの検査をして選りすぐりの木を使って、安いくらい」と品質の良さにほれ込み、購入を決めた様子だった。
林業が復活すれば過疎も止まる?
小嶋工務店は年間およそ70棟をつくる普通の工務店だったが、価格競争に負けて経営危機に陥っていたという。
経営を引き継いだ小嶋智明社長(46)は「自分たちにしか作れない家を作る」と、このTOKYO WOODに賭けている。「今後は希少価値を高めて金額を上げて、林業に還元するのが最後の私たちの役目」と語る。
資源がないと言われている日本だが、実は森林大国で、林業が復活すれば過疎化の村に人を呼び込む可能性があることが分かった。特に、若者が集まり地域にあるもので産業を作っていこうとする姿は魅力的だ。ぜひ継続的に成功させていって欲しい。(ライター:okei)
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