2014年11月07日 16:31 弁護士ドットコム
予備試験に合格すれば、法科大学院(ロースクール)に行かなくても司法試験を受験できる。そんな「予備試験制度」を活用して、弁護士などの法曹資格を得ようとする人が増えている。法務省は11月6日、今年度の予備試験の結果を発表した。1万2622人が出願し、最終合格者は356人だった(合格率3%)。
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司法試験を受けるためには、法科大学院を修了しなければいけないのが原則だ。しかし、予備試験という例外的なルートがある。これは、経済的な理由などで法科大学院に進学するのが難しい志望者にも「法曹への道」を開くために、2011年から始まった制度だ。予備試験に合格すると「法科大学院を修了した者と同等の学力がある」とみなされ、翌年から司法試験を受験できるようになるのだ。
予備試験は、短答・論文・口述と3次まで試験があり、試験科目に一般教養が含まれるなど、司法試験よりも範囲が広い。さらに、合格率が司法試験に比べて極端に低いことから、「司法試験よりも予備試験のほうが難しいのではないか」とささやかれている。今年でいうと、受験者ベースで、司法試験の最終合格率が22.5%だったの対し、予備試験の合格率は3.4%と、7倍近い開きがあった。
試験が始まった2011年に116人だった合格者は、その後、2012年の219人、2013年351人と増加してきた。予備試験の出願者数は、法科大学院人気の落ち込みと対照的に、年々数を伸ばしており、今年はついに法科大学院への進学希望者の数、1万1450人(併願含む延べ数)を上回った。
司法試験予備校の「辰巳法律研究所」で講師をつとめる西口竜司弁護士は、こうした結果について、「司法試験合格者が減少している中、微増ながらも予備試験合格者は増加しました。今後も、予備試験が法曹資格取得へのルートとして、より重要になっていくのではないでしょうか」と指摘する。
試験結果から、何が読み取れるだろうか。
「本来予備試験は、経済的事情や仕事との関係で法科大学院に進学することができない多様な人材を集めるために始まりました。
しかし、今回の結果をみると、大学生や法科大学院生が、予備試験合格者の約8割を占めています。
こうした結果をみると、予備試験が、そもそもの制度趣旨と異なり、優秀な学生たちの『ショートカット』として機能しているように感じます」
予備試験本来の役割と違う機能を果たしていることについて、問題があると指摘する声もある。
「ただ、若い優秀な人材が予備試験を利用して最短距離で法曹を目指すのは当然だとも思うので、難しいところではあります」
このように西口弁護士は話していた。
司法試験合格率の低下や法科大学院の統廃合など、予備試験以外でも、法曹を目指す受験生の環境はめまぐるしく変化している。誰のために、どんな制度をつくるべきなのか。引き続き、議論を重ねていく必要がありそうだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/