面接中に「内定を出すから、ここで他社の選考を断れ!」というふざけた脅しに従うべきではない、と以前書きましたが、くだらない企業の悪行は選考だけでは終わりません。内定を出してからも、あの手この手で逃がさないように手を尽くしてきます。
最近知ったのは、内定者研修と称して、自社が運営するセミナーを有料で受けさせる企業の存在です。その企業は全国的に料理教室を開いていることもあり、内定者研修も料理を覚えることから始まったそうです。(文:河合浩司)
内定辞退で「費用を全額支払え!」
被害に遭ったのは、知人の娘さん。セミナーには一般の方々に混じって参加するよう指示され、しかも参加費は自己負担だとか。知人から「内定者研修が自社の講習で、それも自腹っておかしくないか?」と相談を受けた私は、きっぱりこう答えました。
「明らかにおかしな話です。その会社には就職しない方がいいですね。すぐに就活を再開することをお勧めします。今ならまだ間に合います」
内定を受けた後も学生さんが気を抜けないとは、世知辛い世の中になったものです。ただ、これよりもさらにひどい事例があるという話を最近聞きました。
売り手市場となり内定辞退が増えたことで、多くの企業が内定者の引き留めに苦慮しています。そこで、どこぞの採用コンサルタントが考えたのが、内定者に「資格取得の講座へ申し込ませる」という手法です。
それも費用が10万円以上する高額なもの。当初の費用は会社持ちなのですが、内定辞退を告げた途端、学生にその全額を支払うよう請求するのです。
お金を支払えない学生は、泣く泣くその会社で1年間を過ごし、翌年に再び就活を余儀なくされる人もいるのだとか。最初この話を聞いたとき、「内定辞退を防ぐためにそこまでするか…」と驚くとともに、あくどい業者のやり口に腹が立つばかりでした。
支払いに応じる前に専門機関に相談を
このような汚い手法で囲い込みをされたとき、就活生は「くだらない企業だということが入社する前にわかって良かった」と考え、すぐにその企業と縁を切りましょう。
万が一、金銭などを請求されたときにも、支払いに応じてしまう前に労働局や弁護士会などに相談すべきです。泣き寝入りをする必要はありません。
今の時期であれば、まだ就活を再開するにも十分に間に合う時期です。地元の商工会議所や中小企業家同友会などの合同説明会が開催されていることもあります。秋採用を継続している企業の求人票が、大学の就職課に届いていることもあることでしょう。
面接に行くと、「他社の選考状況は?」「内定は出なかったの?」などと詮索されることがあるかもしれません。その時は、
「実は内定をもらっていたのですが、変な会社に引っ掛かってしまって…」
と、事情を素直に話してくれたらいいと思います。困っている学生さんの力になりたいと思っている社会人も、必ずいるものです。
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