インタープロトシリーズの最終戦が、11月1~2日に開催され、プロクラスで連勝を飾った、平川亮(RSS広島トヨペットIPS)が2連覇を達成した。一方、ジェントルマンクラスでは、レース1で優勝のYuke Taniguchiがチャンピオンを決めたが、レース2では無念のリタイア。永井宏明(リジカラIPS)が初優勝を飾っている。
まず最終戦の話題として、レクサスIS Fのサーキット専用車両『CCS-R』の参加が認められたこと、そしてIPS用車両『kuruma』の2015モデルが発表となったことを挙げておきたい。CCS-Rとはサーキット・クラブ・スポーツ-レーサーの略称で、初めて国内でレースする機会が設けられ、3台が出場した。また、『kuruma』の2015モデルに求められたのは、若干の空力改善と、商品価値の向上。基本的に従来はガルウィングだったドアが横開きに改められた以外は、カウルのみ変更されており、精度が高められて万が一の際に部分補修も可能とされている。現状のエントラントに対しては変更が推奨されるが、変更せずそのままでの参加も可能とのことだ。
さて予選だが、あいにくのウエットコンディションに。ジェントルマンクラスでは初参戦のCCS-Rが予想以上のポテンシャルを発揮し、IPSを上回るストレートパフォーマンスで、中盤までスーパー耐久にも出場する平沼貴之(埼玉トヨペットGB CCS-R)がトップに。終盤になってTaniguchi、永井、AKIRA(RSS広島トヨペットIPS)が上回るものの、総合でも4番手につけた(ただし、グリッドはクラスごとに分けられた)。
プロクラスでは計測10分間の大半を中山雄一(KeePer I.P.S)が支配したものの、最後の周で平川が逆転し、ポールポジションを獲得。しかし、ふたりのタイム差はコンマ05秒と、決勝も接戦となることが予想された。3番手は山野直也(INGING MOTORSPORT)が獲得。CCS-Rクラスでは果敢にも阪口良平(NTP RACING CCS-R)がスリックタイヤで挑むも、「10分じゃ温め切れませんでした」と最下位に甘んじ、番場琢(埼玉トヨペットGB CCS-R)がトップとなった。
ジェントルマンクラスの決勝レース1は再び雨に見舞われたこともあり、セーフティカースタートとなり、2周の先導を経てバトルが開始された。まず繰り広げられたのは、Taniguchiと永井による激しいバトル。7周目に永井が前に出ると、いったんはリードが広がっていくが、10周目を超えると逆にTaniguchiのペースが上回るように。勝負の時が再び訪れたのを理解したTaniguchiは、11周目のパナソニックコーナーで永井のインを刺し、トップに浮上。そのまま逃げ切って6勝目をマークするとともに、レース2を待たずしてチャンピオンを決定した。
「勝ってチャンピオンを決めたかったから、抜き返せて良かった。ペースが違うのかな、と思ったけれど、たぶん永井さんは僕を抜く時にタイヤを使いきっちゃったんだと思う。僕も最後はズルズルでした。メカニックに恩返しができて、すごく嬉しいです」とTaniguchi。
レース2はセミウエットと言うべき路面状態のため、再びセーフティカースタートが切られることになったが、なんとTaniguchiはスリックタイヤをチョイス! 他にも3番手のAKIRAと5番手のFLYING RAT(INGING MOTORSPORT)もスリックタイヤを装着し、その動向が注目された。しかし、Taniguchiはタイヤに熱を入れようと激しくクルマを振ったのだろう、セーフティカーの先導中にスピンを喫し、クラス最後尾へと後退。バトル開始から1周でひとつ順位を上げるも、4周目の1コーナーでクラッシュし、新王者として有終の美を飾れず。これで永井が一気に楽になり、そのまま逃げ切って初優勝を飾った。
一方、スリックタイヤ組は、なかなか温まらずAKIRAのタイムが永井を上回ったのはラストの4周。その段階でトップの永井とは13秒、2番手の畠中修(KeePer I.P.S)とも5秒の差があり、ゴール間際のストレートで、畠中に並ぶのがやっとだった。「ここまで歯車がうまく噛み合わなかったので、この優勝は本当に嬉しい! 戦略がうまく決まりました。最後、僕もタイヤがきつかったんですが、タイムを落とさずに走れたので満足しています」と永井。
CCS-Rクラスではレース1を平沼が制し、総合でも6位につけたものの、レース2は燃料ポンプのトラブルでスタートできず。伊藤康則(NTP RACING CCS-R)が優勝を飾っている。
プロクラスは、2レースともにドライコンディションで競われた。レース1のスタート直後は中山のペースが今ひとつで、山野とロニー・クインタレッリ(ララパルーザ)に相次いでかわされてしまうが、このふたりはパナソニックコーナーで接触。山野はクラス最下位に、クインタレッリは5番手に後退してしまう。これで中山が2番手に返り咲くも、すでに平川は2秒3ものリードを確保する。
ところが、間もなく降り始めた雨がドラマを作ることに。終盤になって中山が一気に差を詰め、ゴール間際は平川の背後にまで迫ったのだ。しかし、スリップストリームから抜け出すまでには至らず、平川がコンマ13秒差で逃げ切りを果たす。クインタレッリが激しい追い上げで3位でゴールするが、先の接触にペナルティが科せられ、40秒を加算。そのため7位に降着となった。繰り上がって3位は佐々木孝太(リジカラIPS)が獲得した。
息尽く暇もなく、続けて行われたレース2では中山のペースも鈍ることなく、平川の背後にぴたりとつけてオープニングラップを終了。だが、2台で激しく競う間にクインタレッリの接近も許し、3周目の1コーナーで中山の先行を許した後は、平川は2台で逃げる策を選ぶ。そんな平川が再び前に出たのは、最終ラップの100R。そのまま中山を封じ込めて6勝目をマーク。そして2連覇を達成することとなった。
「今までスーパーフォーミュラ以外、出てきたカテゴリーではチャンピオンを獲ってきたし、今年もGT500の36号車、スーパー耐久でもチャンピオン獲得に貢献できる……はずなんで。何が何でも勝つことより、むしろチャンピオンを意識して走っていました。IPSが今後どう発展するか分かりませんが、最初の2年を獲ったことは歴史にも残ると思うので」と平川。
CCS-Rクラスのレース1は、2周目にトップに立った阪口の独走に。しかし、レース2では「後ろから勢い良く来ていたし、レース1は僕が逃げちゃったから、今度はレースを盛り上げようと、あえて行かせて様子を見るつもりだった」と番場の先行を許すも、7周目のプリウスコーナーでわずかに足を落とし、その時のロスが響いて阪口は再逆転ならず。優勝を飾った番場は、「トップに立ったのは富士のどこか! 集中して走り過ぎて、どこで抜いてきたのか忘れました(笑)」と、らしいコメントを発してくれた。
(はた☆なおゆき)