ロズベルグが日本GP以来となるポールポジションを獲得した予選後に開かれたトップ3会見で、こんな質問が記者席から飛び出した。
「もしかしたら、ドライバーの皆さんもお気づきかと思いますが、フォース・インディア、ザウバー、ロータスの3チームが日曜日のレースをボイコットするかもしれません。これは推測でも、ウワサでもなく、かなり真実味を帯びた情報です。もし、これが現実となった場合、F1界にどのような衝撃となると思いますか?」
ケータハムとマルシャが欠場し、9チーム18台のみが参戦して開幕したアメリカGP。コンコルド協定では各グランプリに参加するマシンは最低でも18台となっているため、ケータハムとマルシャが不在でもアメリカGPは問題なく開幕することができた。しかし、参加した9チームの中にも、第二、第三のケータハム、マルシアになる可能性があるチームがあると言われていたため、アメリカGPのパドックは緊張感が漂っていた。
そんな中、フォース・インディアのホブ・フェーンリー(副チーム代表)がイギリスのメディアに、「現在の状況を変える努力をトップチームやFIAが見せないのであれば、ありえないことはない」と発言。かねてから小規模チームが導入を訴えていた“コストキャップ制”を導入する方向性を見出さないのであれば、アメリカGPのレースをボイコットするという可能性を示唆したのである。実はフォース・インディアもパワーユニット代金の支払いが遅れていたため、アメリカGP参戦が危ぶまれていた。
冒頭の質問は、そのような事態をトップチームのドライバーたちはどのように考えているのかを尋ねる意図として出されたものだった。しかし、メルセデスAMGのふたりは「ノーコメント。だって、僕はそんな話聞いていないから、それを論じるにはふさわしい人間じゃない」と言って、質問をさえぎった。
そこで、ボイコットするのではないかとウワサされたチームのひとつ、ザウバーの関係者に真偽を尋ねると、「それ(ボイコット)はない」と断言する。ただし、「今F1が変わらなければ、来年どうなるかはわからないがね」と続けた。
しかし、今年コンストラクターズ選手権を制したメルセデスAMGのトト・ウォルフ(エグゼクティブディレクター/ビジネス)は、「もしコストキャップ制を導入すれば、今度は我々のチームスタッフを削減しなければならなくなるということを忘れないでほしい。さらにF1の経費は管理が複雑なので、他のスポーツのように簡単にはいかないだろう」と、コストキャップ制導入案に反対の姿勢だ。
タイヤ問題でミシュラン勢がレースをボイコットした2005年のインディアナポリス(ミシュランタイヤ装着車は、フォーメーションラップを走っただけでピットに戻り“リタイア”。結局ブリヂストンタイヤを履いた6台のマシンでレースが行われた)。あれから9年——2014年のアメリカGPは、オースティンで新たな問題に直面し、眠れない夜が続いている。
(尾張正博)