トップへ

不動産「ネット取引」解禁は近い? メリットとデメリットを整理してみた

2014年10月31日 18:11  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

マンションなどを借りる際に、宅建の資格を持った担当者が直接客に会って説明するように義務づけていた「重要事項説明」を、スカイプなどのテレビ電話で済ませられるように、制度を変更する検討が進められている。


【関連記事:「こんなキラキラネームはいやだ!」 子供による「改名」が認められる条件は?】



検討会の資料によると、トラブルの被害が比較的少ない賃貸契約と、個人よりも理解力のある法人同士の売買契約で、1~2年間の社会実験を実施した後に本格運用を検討する。実現すれば、遠方の居住者が、実際に現地に足を運ばないでも、契約を済ませることができるようになる。



不動産の「ネット取引」解禁については、楽天の三木谷浩史会長兼社長が代表理事をつとめる新経済連盟などが推進する一方で、業界団体などから「図面を多用した説明が一般的なのに、消費者が十分理解できるのか」「資格を持たない担当者が主任者証を偽造して説明する可能性がある」と懸念の声もあがっている。もしテレビ電話が導入された場合、消費者に対してどんなメリットやデメリットが想定されるのか。栗原さやか弁護士に聞いた。



●テレビ電話導入のメリットは?


「不動産の重要事項説明にテレビ電話を導入するメリットとしては、次のような点が挙げられます。



(1)取引を検討する段階で、転勤者や学生などが遠方から何度も足を運ぶ負担を軽減できる


(2)簡単に録画ができるため、後々起こりうるトラブルを防止できる


(3)海外投資を含む取引が拡大し、経済的効果が期待できる」



テレビ電話導入のメリットについて、栗原弁護士はこのような点をあげる。特に遠隔地への引っ越しの際には手間やお金の節約になるだろうし、言った言わないのトラブルも減るとすれば、導入は魅力的だ。だが、良いことばかりなのだろうか?



●導入にあたってのデメリットは?


「制度の導入にあたって検討すべき事項としては、次のような指摘があります。



(1)消費者のネット環境や知識は千差万別である


(2)固定カメラからの映像だけでは表情を十分に捉えられないため、業者の説明を消費者がきちんと理解できたかどうかの判断が難しい


(3)IT化にあたって新たに電子署名の手続が必要になる」



栗原弁護士は「重要事項説明をテレビ電話で行えば、消費者の利便性や市場取引の拡大といった効果が期待できるでしょう」とメリットを指摘しつつも、「しかし一般に、不動産取引は価格が高額であり、取引頻度も限られるなど消費者保護の必要性が高いです。そのため、実現にあたっては今後も慎重な検討が必要になるといえそうです」と警鐘を鳴らしていた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
栗原 さやか(くりはら・さやか)弁護士
仙台あさひ法律事務所弁護士。司法修習終了後、企業法務を取扱う東京の法律事務所に勤務し、不動産会社やメガバンクの法務部にも在籍する。現在は仙台弁護士会に所属し、会社や不動産関連の事件に加えて債権回収、相続、離婚、債務整理等も取り扱う。
事務所名:仙台あさひ法律事務所
事務所URL:http://mk-lawoffice.jp/