就活生に対し「服装で目立とうとしてはいけない」とクギを刺す記事が、10月28日に公開された。筆者は「東洋経済HRオンライン」の田宮寛之編集長。記事では、
「リクルートスーツは黒でなければいけないのですか」
という質問に、田宮氏は「黒と決まっているわけではありません」と答え、黒以外にも濃紺やグレーでも問題ないとしながらも、ストライプの入ったスーツは「やめた方が無難です」と警告する。記事タイトルには「リクルートスーツは、『黒系』を選べ!」とある。
「ビジネスでは紺か濃紺では?」の指摘も
理由はこうだ。ストライプのスーツを見た面接官の反応は「プラス評価」「プラスともマイナスとも評価しない」「マイナス評価」の3つが考えられるという。どのケースが多いかは「調査したことがないのでわかりません」とするが、各ケースを3分の1ずつと仮定すると、3分の1の確率で「マイナス評価」されるリスクがあるというのだ。
一方、無地の黒のスーツは「プラスでもマイナスでもなくニュートラル」なので心配はなく、ブレザーもストライプと同様に避けた方がいいらしい。
これに対して、なぜストライプにだけがリスクがあるのか、黒スーツはリスクがゼロなのか、リスクを3分の1ずつと仮定する理由が分からないなど、「黒スーツ」という結論ありきのような考察に首を傾げる読者が続出した。
「その理屈なら明日富士山が噴火する確率は50%になるな」
社会人が黒のスーツを着ることは、通常は冠婚葬祭以外にはない。「パーティーじゃないんだからビジネスでは紺か濃紺では?」と疑問を呈したり、「お祈りしたり黒い服着たり、就活はお葬式に似てる」と揶揄したりするツイートがあった。
現状では黒いスーツを着る学生が大多数を占めているが、この慣習に人材教育コンサルタントの田中淳子氏は、採用者の立場から苦言を呈している。
「悪い大人がこういうことを喧伝するw。『黒いスーツ』。実際に面接すると『誰が誰だかわからなくなる』のだが。ほんと困るんだが」
業界の特性踏まえ「自分の頭」で考えるべき
平素からサラリーマン社会の掟に疑問を抱く若手ネットユーザーからも、
「ストライプの何が悪い」
「日本の就活の縮図みたいな記事だな」
「キモすぎる。同化とか何を生み出すのでしょうかw」
など批判が続出し、ネット上でもはやフルボッコ状態。東洋経済オンラインに「スーパーIT大学生Tehuの未来予測」という連載コーナーを持つ張惺さんも、「東洋経済こんなくだらない記事書いてどうするの」と呆れている。
筆者は東洋経済新報社で記者経験があることから、「自分が知っている業界の慣習に引っ張られているのだろう」という人もいた。確かに何色のスーツが適切かというのは、業界によっても大きく変わってくる。
紳士服のアオキのウェブサイトに掲載された「就活ファッションマップ」によると、公務員や金融など堅さを求めるところでは「堅実」で「一般的」な服装が求められる一方で、アパレルやマスコミなどでは、逆に「個性的」で「柔軟」な服装が適切だという。
ある業界記者によると、大手商社や大手広告代理店では「仕立てのいいスーツを着こなすセンス」があると有利だとか。その場合は濃紺や薄いストライプは、効果的だという。一方、ITメガベンチャーでは、堅苦しいスーツスタイル自体が減点要素にもなりかねない。
面接には「服装がまったく関係ない」といえない場合があるものの、「黒なら無難という思考停止は、明らかにリスキー。そのくらい自分の頭で考えられる人じゃないと、いまの面接は通らないんじゃないですかね」という。
なお田宮氏は、過去にも「初任給が30万円を超えていたら、おかしいと考えて」「(大企業でもないのに)『私たちと一緒に世界を変えよう』と呼びかける会社には冷静に」などした記事を書いており、その大企業志向に読者から「感覚が古い」などの声があがっていた。
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