外食チェーンで働いていると、どの店も社員は少数で、大半はアルバイトという人数構成になります。その方が、人件費が安く済みますし、外食チェーンの仕事は単純作業で、今日入った高校生でもできるレベルですから。
一方、正社員が多いと採用コストも大きく、利益に直接響きます。とはいえ、学生のアルバイトが多いと、社会人の常識では考えにくいことを平気でやったりもするので、なかなか頭が痛いところです。(文:ナイン)
「手すべった?」と状況を確認しようとしたところ…
ある日の営業中、アルバイトの女子大学生が広いお座敷の席にお茶を運びました。すると、「ガシャン!」と、誰もが聞きたくないグラスの割れる音が店内に響きました。
たまたま近くでこの音を聞いた私は、「これはこぼしたな」と察し、すぐに名刺を持って駆けつけました。グラスの破片で怪我をされているかもしれませんし、中身が熱いお茶だったので、やけどをしているかもしれません。
「お客様、申し訳ございません。お怪我はございませんか?」
と聞くと、「大丈夫です」との答えが。不幸中の幸いで、外傷はないようです。ただ、明らかに被服にお茶の汚れがついているのが分かりました。
ひとまず、ご連絡先を聞き、後日クリーニング代を支払うことで納得していただけました。ホッとしてから、アルバイトを呼んで状況を確認し、指導することにしました。
この女子大生は勤務態度も真面目で、明るい性格から誰からも好かれるタイプですので、厳しく言うつもりはありませんでした。私は言葉に気をつけながら、「さっき、どんな感じだったの? 手すべった?」と尋ねると、彼女は思いもよらない言葉を返して来ました。
「いや~、ちょっとですよ、ちょっと。お客様の服に、チョチョって付いただけじゃないですか。別に何ともないですよ、アハハ!」
怒られるのが嫌なのか、事の重大さが理解できないのか
その言葉に驚いた私は、「コイツは全く反省してないな。というより、大したことじゃないと思ってるんだろうな」と感じ、
「いや、少しかもしれないけど、お茶だったんだから、やけどしたかもしれないでしょ。割れたグラスの破片で、怪我したかもしれないしさ」
多少怒った口調で言い、事の重大さを伝えるつもりでした。すると、
「だから、大丈夫ですよ! チョチョって感じだし、こぼしたって言っても。だって、ちょっとですよ、ちょっと」
この態度には、私もさすがにイラッとして、「ちょっとかどうかが問題じゃないだろ? 店で食事して、お茶かけられたら誰だって気分悪いだろ!」と、さらに強く言いましたが、またしても笑って流されました。
私も「これ以上、彼女に何を言っても無駄だな」と思い、追及をやめました。彼女は、私に怒られると思い、あえて笑ってすましたのか、本当に大したことじゃないと思っているのか分かりません。
アルバイト全員がこういう態度ではありませんが、常識のないアルバイトがいると、人件費とは別のコストが掛かるんだよなあ、と痛感した一件でした。
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