2014年10月30日 10:41 弁護士ドットコム
部外秘の「要人警備マニュアル」など、京都府警の執務上の資料約50点がネットオークションで売買されていたことが10月初めに明らかになり、物議をかもした。京都府警は、資料を流出させたとして、地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで、元警察官の男性(51)を書類送検した。
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朝日新聞によると、男性は在職中に手に入れた資料を、退職した後、知人に譲渡した。その後、知人がネットオークションに出品した。男性は「競売に出されるとは思わなかった」と話しているという。府警は「すべて回収し、警察業務への影響はない」としているが、悪意ある人物の手に渡っていたらと思うと、ゾッとする話だ。
現職の警察官が、捜査資料の取り扱いに注意を求められるのは当然だが、その義務はいつまであるのだろうか。泉田健司弁護士に聞いた。
「まず、法律の規定を確認しましょう。
地方公務員法34条は『職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない』と規定しており、地方公務員の守秘義務を定めています。
そして続けて、『その職を退いた後も、また、同様とする』と規定しています。つまり、退職後にも守秘義務を課しているわけです」
公務員には、在職中だけでなく、退職後も守秘義務があるわけだ。
「府警の警察官は地方公務員ですから、この法律の適用を受けます。
というわけで、法律上、警察官は『退職後』も守秘義務を負っているということになります」
なぜ、こうした守秘義務が課せられているのだろうか。
「警察官は職業柄、個人のプライバシーに触れる機会が多い職業です。また、今回の要人警備マニュアルのように、公益にかかわる秘密を知ることもあります。
こうした個人や公益に関する情報を保護するために守秘義務は課せられています。警察官が退職してからも、同様に保護されなければならないのです」
具体的には、どういうことだろうか?
「たとえば、警察官にストーカー被害を相談した人がいるとします。
もし、相談を受けた警察官が、退職した後に、相談内容をぺらぺらしゃべる可能性があるなら、市民は不安で相談などできなくなります。
また、今回のように、要人警備マニュアルということになると、その内容が悪用されるリスクがあります」
「今回の件で私が危惧するのは、そういった資料を持ち出せてしまう警察の現状です。
『警察業務への影響はない。』とのことですが、簡単にコピーがとれる時代です。心もとないと言わざるを得ません。
これは、一般企業でもいえることですが、職員にそういった資料を持ち出させない工夫が必要でしょう」
このように、泉田弁護士は危機感を表明していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
泉田 健司(いずた・けんじ)弁護士
大阪弁護士会所属。大阪府堺市で事務所を構える。交通事故、離婚、相続、企業法務等を中心に地域一番の正統派事務所を目指す。趣味は将棋、カープ、そしてドラえもん。
事務所名:泉田法律事務所
事務所URL:http://izuta-law.com/