26日に鈴鹿サーキットで決勝レースが行われたWTCC世界ツーリングカー選手権日本ラウンドで、レース2の表彰台を見た方は大いに驚いたのではないだろうか。2位表彰台を獲得したドゥサン・ボルコビッチは、身長2メートル7センチ。その大きな体をいっぱいに喜びを表現したボルコビッチは、セルビア人として世界選手権初めての表彰台を獲得したのだ。
ドゥサン・ボルコビッチは、カートからモータースポーツキャリアを始め、セルビアでさまざまなレース活動を展開。その後ヒルクライム競技に参加しミツビシ・ランサー等を駆り活躍2012年にはチャンピオンを獲得し、2013年にはETCCヨーロッパ・ツーリングカー選手権に参戦。ランキング3位を獲得した。
今季、ボルコビッチはセルビア石油産業(NIS)のサポートを受け、セルビア人ドライバーとして初めてWTCCに参戦を開始。25日に行われた予選では、シボレーRMLクルーズTC1を駆り9番手を獲得し、リバースグリッドとなるレース2のフロントロウを獲得。レースペースが僅差だったこともあり、レース2ではスタートを決め2位表彰台を獲得した。
ボルコビッチはついに待望の表彰台に上ることになったが、彼はレーシングドライバーとしては異質とも言える207cmの身長の持ち主。日本のホテルでは、シャワーを浴びる時に天井に頭が当たってしまっていたほど。表彰台は1位、2位、3位と高さが下がっていくが、優勝したガブリエレ・タルキーニよりもボルコビッチの顔は高い位置にあり、お互いに苦笑いを浮かべていた。
とは言え、セルビア人初の世界選手権表彰台を得たボルコビッチは全身で喜びをアピール。感極まったかシャンパンファイトでは表彰台に座り込み、隣国ハンガリーのノルベルト・ミケリスからシャンパンを浴びせられた。
「レース1ではティアゴ・モンテイロよりも速いペースで走ることができて、コンペティティブだと感じていたんだ。リスクを冒さないようにしようと思いながらも、モンテイロをパスできたからね」とボルコビッチ。
「レース2ではタイヤを使いすぎないようにトップを狙ってタルキーニとの差を詰めていこうと思ったけど、ミケリスとの戦いで数秒を失ってしまった。でも幸運にも自分のポジションを守ることができた」
ボルコビッチは記者会見でも、心ここにあらずと言った面持ちで多くの人への感謝を語り、会見でも嬉しそうに写真を撮影していた愛妻アンドリヤナ夫人とキスを投げ合い続けた。
「僕を信じ続けてくれたチーム、スポンサー、母国セルビア、そして、セルビアの国旗を世界選手権ではためかせるためにサポートしてくれたアレクサンダル・ヴチッチ首相、トミスラヴ・ニコリッチ大統領をはじめとしたセルビア政府に感謝したい」
「今でも信じられないよ! 今まで家族や妻、それにチームやファンから本当にたくさんのサポートを受けてきて、この結果を出すことができた。本当に感謝しているよ」
ボルコビッチは「日本という国で本当に素晴らしい成績と思い出を得ることができたよ!」と大切にトロフィーを箱に詰め、母国セルビアに向けて戻っていった。