2008年から日本でも開催されているツーリングカーレースの最高峰、WTCC世界ツーリングカー選手権。このシリーズは世界59ヵ国にネットワークをもつヨーロッパのスポーツ専門テレビ局の子会社、ユーロスポーツ・イベントがプロモートしているが、この中でディレクター・オブ・オペレーションを務めるフランソワ・リベイロに話を聞く機会に恵まれたので、テーマごとにお届けしよう。2回目は、2015年に向けて動き始めているTC3シリーズについてだ。
●TC3カテゴリーとは?
WTCCでは今季テクニカルレギュレーションが変更され(14年導入の新規定については第3回で触れる)、シトロエン、ホンダ、シボレー、ラーダが開発した新規定車両はTC1、従来のWTCC車両はTC2として呼称されている。そこへ、『ツーリングカーの新たな入門カテゴリー』として15年から導入されようとしているのが、TC1、TC2に続くTC3カテゴリーだ。
世界各国で行われているツーリングカーシリーズの車両を、世界中で流行しているスポーツカーカテゴリーのFIA-GT3同様バランス・オブ・パフォーマンス(BoP)で調整。さまざまな車種の参加を募り、同一規定の下でインターナショナルなシリーズを立ち上げるほか、アジアシリーズ、ポルトガルシリーズが開催されるという。
また、ドライバーやチームもすでに参加を表明し始めた。オニクス・レースエンジニアリングがフォード・フォーカスSTでのTC3車両開発を表明したほか、ターゲット・コンペティションがセアト・レオンのカップカーでの参戦を表明。また、WTCCでも活躍したペペ・オリオラが参戦を計画しているという。
さらにシリーズでは、立ち上げに際し長年WTCCに関わったマルチェロ・ロッティを運営に加えているほか、「参加に適した車両」として下記の既存車両、ショーモデルを挙げ、参加を募っている。
・メルセデスベンツCLA45 AMG
・セアト・レオン・カップレーサー
・フォルクスワーゲン・ゴルフGTI
・フォード・フォーカスST
・ホンダ・シビック・タイプR
・オペル・アストラOPC
・アルファロメオ・ジュリエッタQV
・ヒュンダイ・ヴェロスター
・ニッサン・パルサーNISMOコンセプト
・ルノー・メガーヌRS
・アウディS3
●「今はまだ何も関係が無いが、コンセプトは気に入っている」
当然ながら、この新しいツーリングカーシリーズが盛況となり、ツーリングカーレースに参戦するエントラントやドライバーが増えれば、今後TC1/2で争われるWTCCへの好影響があるのは間違いない。では、WTCCを運営するリベイロに、WTCCとTC3とは現在どのような関連があるのかを聞いてみた。
しかしこの問いに対し、リベイロは「今は何も関係がない」と言う。
「君はTC3のスポーティングレギュレーションを持っているか? テクニカルレギュレーション、カレンダーを持っているか? もしその3つを見せてくれれば、WTCCとの関連を語ることができるだろう」とリベイロ。実際、まだ詳細なレギュレーションやカレンダーはまだ明らかにされていない。
ただ、リベイロはTC3のコンセプトについては前向きな意見を示した。
「コンセプトは気に入っているよ。これを進めようとしているマルチェロ・ロッティとは10年の付き合いで、WTCCにも貢献した男だ。彼が何をできるかは知っている。今のところはまだコンセプトなので多くを語ることはできないがね」
「今存在しているクルマのパフォーマンスをBoPで揃えようというコンセプトは非常に興味深いよ。もしうまくいったらそれは素晴らしいことだ。若いドライバーにとってのツーリングカーの入口としても、素晴らしいものになるだろう」
●「WTCCについても好影響があるだろう」
現在のところ、WTCCとTC3の関係については否定したリベイロ。ただ、「現在はツーリングカーのピラミッドの底辺が存在しないので、TC3は必要」だと今後の重要性を語った。
「今は多種多様な国内シリーズが存在して、全部違うレギュレーションなんだ。中国のCTCC、イギリスのBTCC、スウェーデンのSTCC、それにアルゼンチン等々あってそれぞれ違う。これはマニュファクチャラーにとっても良くないし、ドライバーたちにとっても良くない。TC3、そしてFIAもツーリングカーの未来について考えていて、TC3がその役目を果たしてくれればいいことだと思うし、WTCCにとってもいいことになるだろう」