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WTCC運営担当リベイロに聞く(1)WTCCと日本の関係「日本人ドライバーの参加が重要だ」

2014年10月27日 15:40  AUTOSPORT web

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WTCC日本ラウンド:レース1のスタートシーン
2008年から日本でも開催され、岡山国際サーキット、鈴鹿サーキットと6年連続で開催されているツーリングカーレースの最高峰、WTCC世界ツーリングカー選手権。このシリーズは世界59ヵ国にネットワークをもつヨーロッパのスポーツ専門テレビ局の子会社、ユーロスポーツ・イベントがプロモートしているが、この中でディレクター・オブ・オペレーションを務めるフランソワ・リベイロに話を聞く機会に恵まれたので、テーマごとにお届けしよう。まず1回目は、WTCCと日本、そしてアジアの関係についてだ。

 WTCCは今季全12戦で争われるツーリングカーの世界選手権で、ワークスではホンダ、シトロエン、ラーダが参戦。プライベーターは今季生まれた新規定、TC1の車両としてはシボレーやホンダ、TC2ではBMWやセアトを使って参戦している。レースはユーロスポーツを通じて放映され、随所にテレビを意識したパッケージングが行われている。

 リベイロは、そんなWTCCの中で『運営責任者』と言える立場にいるが、WTCC日本ラウンドの予選日夜、彼にインタビューをする機会に恵まれた。リラックスした様子で現れたリベイロは、こちらが自己紹介すると「日本語は読めないが、オートスポーツwebはよくチェックしているよ。それに(雑誌の)オートスポーツもヨーロッパで入手することができるので読んでいる。写真を眺めるだけだが、他のカテゴリーに対して、WTCCがどれほど誌面を割かれているのか見ているんだ。それが日本においてWTCCがどれほどの関心があるのかバロメーターになるからね」という。

●「今後、日本でのライブ中継も検討したい」
 そんなリベイロにはさまざまなことを聞いたが、日本に対するリサーチ力はこちらが驚くほどだ。WTCC日本ラウンドはテレビ大阪で11月1日(土)にダイジェスト放送されることが決まっているが、系列のテレビ局5局の名前がスラスラと出てくる。また、他の日本のレースシリーズのテレビ放映も完璧に把握していた。

「我々はTXNの6局と契約していて、来週土曜に45分のダイジェストを放映するんだ。(CS局の)GAORAとはずっと契約を結んでいたが、彼らはちょっと野球にお金を使いすぎてしまったようだね(笑)。だから契約を中止せざるを得なかったのは残念だ」とリベイロ。

「番組を作るテレビ大阪でも技術的にはライブ放映はできるんだが、こちらが日本語の字幕を用意できない。テレビ大阪では45分のハイライトをやるが、日本のファンにどのようにWTCCを伝えるかについて素晴らしい台本を書いてくれている。ただ、ライブでやるにはもう少し研究しなければならないんだ」

「スーパーGTはJ SPORTSでライブをやるけど、(地上波の)テレビ東京ではライブじゃないだろう? だからWTCCがハイライトでもいいと思っている。他のレースでもライブは全部BS局だろうからね。もちろん、WTCCをライブで見たい人はいると思うので、それに向けては努力していきたい。その分皆さんのような雑誌、ウェブの役割が重要になるんだ」

「それに、日本人ドライバーの参加も重要だろう」

●「日本人ドライバーに出てもらうことが重要」
 リベイロから言葉が出た、WTCCへの日本人ドライバーの参戦。これまで、2008年の初開催以来、ワークスでの参戦を含め数多くの日本人ドライバーがスポット参戦してきた。日本ラウンドの後に開催されるマカオとのパッケージでの参戦だったり、日本戦のみの参戦だったりとそのパターンはさまざまだったが、ここまで谷口行規のクラス優勝等はあったものの、目立った成績が残せているドライバーはほとんどいないと言っていい。フル参戦を実現したのも谷口のみだ。クセのあるマシンの難しさもあるし、チーム体制に恵まれなかったパターンが多い。

 迎えた2014年の鈴鹿戦は、レギュレーション変更による台数低下等の影響もあり、WTCCの日本ラウンド開催で初めてひとりも日本人ドライバーが参戦しないレースとなった。この状況について、リベイロは非常に憂慮を示している。

「日本はWTCCの今年のカレンダーの中で、唯一地元から参戦するドライバーがいないんだ。もう一度言おう。唯一だよ」とリベイロ。

「今は中国人ドライバーも非常に素晴らしいドライバーがいる。中国はまだモータースポーツの歴史が10年ほどしかない。一方で日本は長いモータースポーツの歴史があり、多くの優れたドライバー、メーカーがあるというのに、ひとりもWTCCに出ていない。来年、再来年に向けて、私のプライオリティのひとつは日本人ドライバーに出てもらうことだ。簡単ではないけどね」

「今年のTC1レギュレーションのクルマだったら、もっと日本人ドライバーも参戦しやすいと思う。もしWTCCで最初のアジア人チャンピオンが中国人だったら、日本人としては納得いかない部分もあるだろう? テストはウエルカムだよ」

「日本ラウンドとの契約年数は何年か教えようか? WTCCと日本の契約は一生モノだ。F1やMotoGPと同じだよ。WTCCは日本で開催されなければいけないんだ。それほど重要な国だ。WTCCのファンも年々増えてきているからね」

●将来に向けたWTCCのアジア戦略
 リベイロの言葉にもあったとおり、現在は中国人ドライバーがWTCCで活躍し始めている。今季、中国マーケットを意識しシトロエンが起用したマ・キンファは、モスクワ戦で優勝も果たした。中国にはCTCCというツーリングカーレースがあり、WTCCへの挑戦は近年において、日本よりも容易な環境にあると言っていい。

 ではその他のアジアのマーケットに対して、リベイロはどういう展望を抱いているのだろうか。現在のところ、アジアでの開催は日本、中国で2戦、そしてマカオとなっている。

「中国はいまや世界で最も大きな自動車マーケットだからね」とリベイロ。

「我々はマレーシアについては興味がない。あそこは多くのファンを集めるのが難しい。興味があるのは、インドネシアでFIAの認定コースができた場合だろう。あそこは3億人近い人口があるからね」

「それとタイだ。先日スーパーGTを開催したと思うが、彼ら(ブリーラム・ユナイテッド・インターナショナル・サーキット)も我々にアプローチしている。すでにサーキットも存在しているしね。ただ、ちょっと距離が遠い(笑)。タイは日本のマニュファクチャラーにとっても重要なマーケットだ。将来の可能性は大いにあるだろう」

「韓国からもアプローチがあったが、韓国のマニュファクチャラーが参戦しなければ開催することはないだろう。韓国では80%の自動車がヒュンダイかキアだからね。これらのメーカーが参戦しなければ開催はない」

 WTCCは2005年に開幕した時には、ヨーロッパ以外の開催はわずか2戦だったが、現在では半分近くがヨーロッパ以外の開催となっている。「WTCCの知名度をそれぞれの地域で上げるノウハウはもっている」とリベイロは胸を張る。

「開催する時には地域の特色を出すようにしているんだ。鈴鹿でもそうだけど、中国ではすごく中国らしさを重視したイベントにしているし、アルゼンチンではすごくラテンな印象を出すようにした。それぞれの国に合った開催をすることが大事だと思っているよ」