今年6月、英国公衆衛生学会のジョン・アシュトン教授が、英国人に「週4日制」の勤務を勧めたことが話題になりました。彼の主張では、英国人は働きすぎており、それは健康に良くないというのです。実際、英国の雇用者は、他のほとんどのEU諸国よりも長い労働時間で働いていることで知られています。
7月6日付の英ガーディアン誌の日曜版「オブザーバー」に寄稿されたリサ・バチェラーの記事には、修士課程の授業を取りながら大学で教えているサラ・バトラーのケースが取り上げられていました。
収入が減っても児童手当や税額控除がある
この1年間、週4日勤務を予定していた彼女は、息子が生まれたのを機に、現在は週2日半の勤務をしています。将来も週5日勤務に戻るつもりはありません。
「どんなお金も休暇には代えられない。今まで働きすぎていたのよ」
と彼女は言います。サラは子供と過ごす時間を増やしたり、勉強時間を得たり、他の技術を身に着けたり、ストレスを減らしたりして、生活の質を向上させるために勤務時間を減らした一人です。しかし勤務日数を減らすことは、本当に効果的なことなのでしょうか。
週1日労働日を減らすことは、「20%の収入減を生き残れるかどうか」ということです。多くの人々にとって、それは大きすぎる減収です。
しかし、サラのように育児のある人や、通勤の交通費を浮かせられる人にとっては、この試みは思いのほかうまくいっているようです(というのも日本以外の海外では、通勤費は会社から支給されないことが多いのです)。
収入が減ったことで、家庭内の1人が年間5万ポンド(約860万円)以上を稼いでいた時にはもらえなかった児童手当を受け取れるようにもなります。税額控除を受けられることもあります。
労働者全員に「フレキシブル労働」が認められる
自営業者にとっては、週に1日、ビジネスの外で過ごすことは、戦略的・創造的思考のためにもかなりのプラス効果がありそうです。
ただし、労働時間を減らし、収入が減ることの影響はさまざまなところに出てきます。職場年金制度に支払われている金額も減ることになりますし、また生命保険なども月給をもとにしているので影響を受けます。
実行に移す前に、勤め先の年金プロバイダー(厚生年金基金など)から書面による説明を受けて検討した方がよいようです。
金銭面以外に気になるのは、上司の反応ですが、英国では今年の6月末、それまで介護者や保母などにのみに認められていた「フレキシブル労働を求める権利」が、年間26週以上の労働者全員に認められることになりました。
この「フレキシブル労働」とは、在宅勤務やパートタイム労働、柔軟な勤務時間などのことで、雇用者に対しても従業員の要望に対処することが義務付けられています。
米国では週4日勤務で回す会社もある
米国フロリダ州オーランドに拠点を置く技術教育会社Treehouseは、週4日勤務を実行しています。創業者のライアン・カーソンは妻から労働時間を減らすよう勧められた当初、それではとても仕事をやりきれないと感じたそうです。
しかし、いい会社を造るためには長時間労働が必要だという常識を覆してみたい欲求にかられ、徐々に労働時間を減らし、現在はフルタイムの従業員72名で年間売上1500万ドル(約16億円)を維持しています。
成功の秘訣は、従業員を信頼すること。時間を多く消費する電子メールの代わりにブログを使い、長いランチタイムをとらず、一刻一刻が貴重なことを自覚してタスクをやり遂げることだそうです。
経営者側、従業員側それぞれにチャレンジのある、週4日制勤務。果たして日本もこの方向へ進んでいくのでしょうか。
(参考)Can I afford a four-day week? (The Guardian)
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