2014年10月27日 11:41 弁護士ドットコム
あなたの会社では、「有給休暇」が取れますか――。
【関連記事:「手当がもらえるなら・・・」 残業代を求める若者は「社会をなめている」のか?】
有給休暇は働く人に認められている権利だが、実際には「5割以上が取得されないまま」になっている。厚生労働省の審議会では現在、きちんと働くためには、きちんと休むことも必要だとして、どうすれば取得率を高められるかが話し合われている。
労働政策審議会・労働条件分科会では9月、「使用者が労働者の希望も踏まえて、あらかじめ具体的な取得日を決定する」ことで、「より確実に取得させることを義務付ける」という手法を検討すべきだという提案が、労働者側の委員から出された。
こうした議論についてネットでは、賛成の声がある一方で、「有給なんて取ったら土日出なきゃいけなくなる」「休むと職場の他の人に迷惑になる」など、効果を疑問視する声があがっている。
有休消化を企業に義務づけることは、大きな目で見て、労働環境の改善につながるのだろうか。労働問題にくわしい河野祥多弁護士に聞いた。
「ネット上の声だけではなく、厚生労働省が実施したアンケートでも、労働者が有給休暇の取得に『ためらい』を感じている現状が浮き彫りになっています。
そのような状況を改善するためには、全員が有給休暇を取得できるようにしなければならない、という法律で環境を整えることも一案かと思われます」
たしかに有給休暇の消化を義務づければ、同僚や上司、職場の雰囲気などに気兼ねする必要はなくなりそうだ。それで、労働環境の改善にもつながるのだろうか?
「一方で、使用者側から見ると、今まで以上に業務効率を上げなければ、これまでと同じ仕事量をこなせないことになります。そのため、さまざまな脱法的な行為が横行するおそれがあります。
たとえば、使用者側がこれまで休日としていた夏休みや年末年始を労働日としたうえで、その日に有給休暇を取得させるような事態が想定されます。
労働者にとっては、実際に有給休暇が消化されたことになるので、万が一の場合の有給休暇がなくなり、現状より不利益が生じる可能性もでてきます」
そんなことになれば、元も子もない。
「有給休暇を取得させること自体が、労働環境の改善につながることは間違いありません。また、実際に適切な休暇をとることは、労働者だけではなく、労働生産性が上がるなど使用者にも利益があります。
今後は、脱法的な行為を防ぎながら、有給休暇を自然と消化できるような方法を慎重に検討していくことが必要だと思います」
河野弁護士はこのように指摘していた。
有給休暇を気兼ねなく取れるようになるためには、「きちんと休むことが、きちんとした仕事につながる」という考え方を、社会に浸透させていく必要があるのかもしれない。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
河野 祥多(こうの・しょうた)弁護士
2007年に茅場町にて事務所を設立以来、個人の方の相談を受けると同時に、従業員100人以下の中小企業法務に力を入れている。最近は、ビザに関する相談も多い。土日相談、深夜相談も可能で、敷居の低い法律事務所をめざしている。
事務所名:むくの木法律事務所
事務所URL:http://www.mukunoki.info/