日本の少子化が止まりません。2013年の出生率は1.43で前年より0.02ポイント増加しましたが、2013年に日本で生まれた赤ちゃんの数は、102万9800人と過去最少を3年連続で更新したそうです。政府でも様々な対策を打っているようですが、目覚しい効果が上がっているとはいえません。
少子化の最大の原因は何なのか。米プリンストン大学のジャネット・カリー教授らの研究によると、米国の多くの女性が「不景気」や「経済的不安」を理由に、子どもを作ることを先延ばしにするということが分かったのだとか。しかも、たとえ景気が一時的に回復したとしても、子どもを作ることに踏み切れない女性も多いそうです。
問題は「男性の安い給料」にある?
この研究結果は、9月30日付けのワシントンポストが報じたもの。カリー教授は「出生率の改善には経済の安定化が重要」とし、リーマンショックを経験した20代後半~30代の女性のおよそ15万人が、40歳まで子どもを作らないと予測しています。15万人という数字は、過去最高の数字だそうです。
ワシントンポストの記事でカリー教授は、女性たちが子どもを作りたがらない理由について、仕事でキャリアを積みたいという女性が増えている可能性を指摘し、「将来多くの女性CEOが増えるかもしれない」と予想しています。
ただし記事だけでは、不況と女性のキャリア志向との関係や、これが少子化とどう結びついているのかよく分かりません。そこでプリンストン大学のウェブサイトで研究レポートを見てみると、記事には触れられていない「結婚相手の男性」の存在が書かれていました。レポートには、
「景気が悪い時代に就職活動をする男性は、給料の安い仕事にしか就けない可能性が高い」
として、「給料の安い(お金を持っていない)男性は女性にとって、魅力的な男性(結婚相手)とは言えない」ということに触れています。
つまり、不況によって「子どもを産み育てていくのに十分なお金をもった魅力的な男性」がいなくなるため、「子どもを産もうとする女性の数が少なくなっている」ということです。そして、「男性が稼がないのであれば自分が稼ごう」というように女性の上昇志向にもつながるということでしょう。
「女性が輝く日本」を推進して大丈夫なのか?
またレポートには、20歳から24歳までの女性の出生率が減少した場合、失業率が1%上がるという調査結果も書かれていました。これはカリー教授たちが1975年から2010年までのおよそ1億4000万人分の出生記録を分析した結果だそうです。
この研究結果を踏まえると、日本が少子化を改善したければ、女性の出産・育児環境の改善もさることながら、「景気の回復」と「男性の賃金上昇」を図った方が結果的にはよいのかもしれません。不況が進めば女性CEOが増えて「女性が輝く日本」になるのかもしれませんが、それはさらなる少子化や失業率の上昇を招く恐れがあるのではないでしょうか。
(出典)How the recession affected womens' decision to have kids (The Washington Post) / Recessions Result in Lower Birth Rates in the Long Run (Princeton University)
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