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「大学生の就活」に油断はないか? 高校生は在学中から企業研究している

2014年10月24日 11:40  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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前回の記事では、「就職時期の繰り下げ」で油断している学生たちに対し、のんびりしていないで世の中の仕事の研究くらい始めてはどうか、と呼びかけました。

すると記事のコメント欄に、採用活動の解禁日を遅らせたのは「学生の勉学を阻害しないよう配慮してのこと」であり、企業側のモラルのなさが就活の早期化を進め「学生らしい活動・成長を阻害している」という声が寄せられました。今回はこの件について、一採用担当者の視点から書いてみます。

高1から目当ての会社と接触している学生も

これは、ある私立高校の経営幹部の方からうかがった話です。その高校の学生は、卒業生の半分以上が就職するので、「俗に言う進学校ではありません」とのこと。

「大学進学を求めるのなら、うちの高校に来るべきではありません。では、保護者の方々は学校に何を求めていると思いますか? 保護者の方々と何度も会い、見えてきた本音は、『子どもを社会に出てから自立できるようにしてほしい』ということでした」

要するに高卒で就職する学生の保護者たちは、学校に対して「わが子を自分で稼いで食っていける社会人に育てて欲しい」と願っているというのです。

したがって、このような高校に子どもを通わせる保護者の方々からすると、本音では学生の間に「青田買い」をしてくれる方がありがたい、と考えているそうです。

このような保護者の意向を受けて、この高校では年に何回も学内に企業の担当者を呼び、授業だけでなくグループワークやイベントなどで、学生と企業が接触できる機会を作っておられます。しかも企業側には、

「いい学生がいたら、学年にかかわらず唾つけておいてください」

とまで言い、先生に話を通してさえいれば、個人的に会うことも許しています。

こうした関わりの中で、出会った企業に就職していく学生が徐々に増えてきているそうです。1年生の頃に企業と出会った学生が、いったんは大学に進学したものの、その先の就活で再度同じ企業に出会い、就職を決めたケースもあるとのことです。

フツーの大学生は「自立した社会人」になることが最優先

私はこの学校の取り組みを初めて聞いた時、「これぞ学校と社会への橋渡しとなる『学校』の本来あるべき姿ではないだろうか」と感じました。一方で、これはある種の大学と学生にも同じことがいえるのではないかと思います。

就職難が社会問題になっている現在、大学は自身の存在価値が「研究機関なのか、教育機関なのか」という間で揺れ動いています。

確かに大学も上位校になれば、研究機関として大きな存在価値があるでしょう。しかし、それこそ偏差値が50を切るような大学で、「自分で稼いで食っていける社会人になること」より研究の方が大事といえる学生がどれだけいるのでしょうか。

前述のような高校生たちが企業と接触を持っているというのに、「大学生だから」という理由で就職活動の準備を怠っていてよいものでしょうか。

そもそも、企業説明会に出席したり、業界研究の本を読んだりすることが、「勉学を阻害」するほど大きな負担になるとは思えません。それこそ分野を問わず、大学生がたしなむべき社会勉強のひとつ、といっても過言ではないでしょう。

一流大学の学生であれば、学校の名前でとりあえず内定を出しておく企業もあります。しかし、そうでない学生は、通常の学業や学生生活とともに、企業研究や仕事研究を早期に始め、日常的に行っていくことは当然のことだと思います。

採用担当者も認識を変え始めている

もっとも、このような準備が必要なのは、一流大学の学生も例外であるはずがありません。そういった準備もせずに入社してしまうことは、ミスマッチが生じるリスクを高めるだけではないでしょうか。

今や金さえ払えば、誰でも「大学生」になれる時代です。大卒を採用することに確かな意味がなくなっていると、採用担当者も認識を変え始めている段階にあります。学生たちにも、同じような頭の切り替えが求められます。

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