秋になって日が落ちるのが早くなると、何となく切ない気分になるものだ。しかし、あまりにも憂うつで何もやる気も出ないとなれば、この季節特有の「うつ病」を疑ってもいい。
ニュースサイト「カンナム経済新聞」が韓国の求職ポータルサイト「ジョブコリア」のアンケート結果を報じたところによると、韓国の会社員の10人に9人が「秋のうつ病」に苦しんでおり、「全てが面倒でやる気が起こらない」と答えた回答者も38%を占めたという。
体調不良が「気分の落ち込み」や「疲労感」に
回答者からは、「1日に数十回も転職や退職について心配している」(35%)、「勤務時間にぼーっとすることが多くなった」(32%)、「仕事への集中力が低下した」(30%)といった訴えも多かったというから、状況はかなり深刻だ。
9月13日付けスポーツ報知「メディカルNOW」によると、秋から冬にかけて出現する抑うつ症状は、「季節性情動障害」「季節性うつ病」などと呼ばれるという。緯度の高い地域の発症率が高いことから、日照時間の減少が関係していると見られている。
10~11月から現れ、2~3月に治まることが多い。症状はうつ病と似ており、「気分の落ち込み」や「疲労感」「食欲の低下もしくは過剰」「思考力や集中力の低下」などがある。男性よりも女性の方が、こうした症状が出やすい傾向があるという。
しかし、オフィスで働いている人たちにとって、日照時間の影響はそんなに多いのだろうか。臨床心理士の尾崎健一氏は「日照時間が原因という明確なエビデンス(証拠)はない」としながらも、「季節の変わり目は、秋に限らず憂鬱な気分になりやすいのは確か」と指摘する。
「秋は気温が変化しやすく心身のストレスになりやすいうえに、夏場の疲れが出て体調を崩しやすい時期です。夏の暑さやエアコン、冷たい飲み物などが知らず知らずのうちに身体の負担になり、秋に体調不良として出ると気分が落ち込みやすくなります」
それでは、秋に抑うつ症状が出てきた場合、どうすればいいのか。尾崎氏は「基本的にうつ病対策と同じ。毎日決まった時間に寝て、決まった時間に起きて朝日を浴びることです」とする。これに加えて、1日3食しっかり摂り、軽い運動をすると脳内神経伝達物質のセロトニンが活性化し、精神的に安定するという。
「明らかに仕事でミスが多くなった」と思ったら要注意
セロトニンは睡眠や体温調整、気分障害などに関係し、精神を安定させる働きがあるが、その生成には良質なタンパク質が欠かせない。
「ヨーグルトなんかがいいでしょう。規則正しい生活を送って体力もついてくれば、ストレス耐性も強くなります。秋の夜長なんていいますが、夜更かしも厳禁です」
抑うつ症状により日常生活に支障が出てきそうだと感じた場合には、早めに病院に行った方がいい。具体的には夏と比べて、
「明らかに仕事でミスが多くなった」
「日中眠すぎて交通事故を起こしそうになった」
「朝起きられなくて会社に遅刻するようになった」
などの兆候が出てきたら要注意だそうだ。精神科や心療内科の受診に抵抗がある人は、健康保険組合や自治体の電話窓口に相談するという手段もある。
「意外と知られていないですが、クレジットカード会社の中には、ゴールドカード会員向けに電話の健康相談サービスをやっているところもあります。電話なら気軽ですし、そこで『専門医に診てもらった方がいいですよ』と言われれば、背中を押されて病院にも行きやすくなるのではないでしょうか」
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