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清水邦夫×熊林弘高による狂気の家族劇、出演者に福士誠治、緒川たまき、門脇麦ら

2014年10月23日 12:50  CINRA.NET

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『狂人なおもて往生をとぐ ~昔、僕達は愛した~』イメージビジュアル
清水邦夫作の舞台『狂人なおもて往生をとぐ ~昔、僕達は愛した~』が、2015年2月10日から東京・池袋の東京芸術劇場シアターウエストで上演される。

1960年から1970年代にかけて、演劇集団「櫻社」を共に立ち上げた蜷川幸雄の演出により上演された作品群で注目を集めた清水邦夫。『狂人なおもて往生をとぐ』は、清水の初期の代表作だ。精神に異常をきたしている長男・出が、自分は売春宿に住んでおり、母・はなは宿の主人、姉・愛子は売春婦、父・善一郎と弟・敬二は客、自身は主人のヒモだと思い込んでいることから、出の妄想にあわせて毎晩「売春宿ごっこ」をする家族を描いた作品。ある日、敬二が恋人・西川めぐみを家に連れてきたことから、「売春宿」の面々で「家族ごっこ」をすることになり、家族を演じるうちに一家の隠された忌まわしい過去が次第に露になっていく、というあらすじだ。

主人公の出役を演じるのは福士誠治。出の姉・愛子役を緒川たまき、弟・敬二役を葉山奨之、敬二の恋人・めぐみ役を門脇麦、出の母・はな役を鷲尾真知子、父・善一郎役を中嶋しゅうがそれぞれ演じる。演出は、『THEATRE PROJECT TOKYO』でアントン・チェーホフ、ピエール・ド・マリヴォー作品などの西洋古典を演出したほか、ジャン・コクトー『おそるべき親たち』の初演で『毎日芸術賞』千田是也賞を受賞した熊林弘高が手掛ける。チケットの一般発売は11月15日からスタートする。

なお同作は、日本の1960年代から1970年代の戯曲を若手演出家が手掛ける東京芸術劇場のシリーズ『Roots』の第2弾作品。第1弾作品は、昨年上演されたつかこうへい作、三浦大輔演出の『ストリッパー物語』となる。

【熊林弘高のコメント】
「狂人なおもて往生をとぐ」はあたかもギリシャ悲劇のように、静かに、一枚一枚、虚飾をはぎとり「真実」を炙り出していきます。家族が行う「ごっこ遊び」はそのまま「ハムレット」の劇中劇に重なり、一家の過去を掘り起こします。古典と呼ばれる偉大な作品同様、「狂人なおもて往生をとぐ」も、いかに家族関係が曖昧で脆弱なものかを描いています。この家族を家につなぎ留めているのは、家族の絆よりも、隠蔽のためだと言えるでしょう。過去が明るみに出ないために、家族ごっこを続けているのです。呪縛から解き放たれた若者は過去の蓄積といえる家から易々と出て行きます。残される者は?父と母は死ぬことも許されず、時間に取り残され、過去と生きていく。現代が抱える独居老人の問題も提示します。