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山下智久さん「書類送検」 携帯を持ち去った疑いなのに、なぜ「器物損壊罪」なのか?

2014年10月21日 19:21  弁護士ドットコム

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人気アイドルの山下智久さん(29)が10月21日、警視庁に「器物損壊罪」の疑いで書類送検されたと報じられ、話題を呼んでいる。


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朝日新聞によると、山下さんは6月25日午前1時ごろ、東京都・六本木の路上で20代女性から携帯電話を持ち去った疑いがもたれている。警察は、山下さんが路上で男性と口論になった際、その様子を女性が携帯電話で撮影しようとしたため、女性から携帯電話を取り上げ、持ち去ったとみているという。



一方で、書類送検の容疑は「器物損壊」だ。一般的に器物損壊といえば、「モノを壊す」というイメージがあるが、スポーツニッポンによると携帯電話は破損しておらず、山下さんの所属事務所の関係者によって警視庁に届けられ、持ち主の女性に返却されたという。



仮に朝日新聞が報じたように、山下さんが携帯電話を「持ち去った」のだとしたら、なぜ「窃盗罪」ではなく、「器物損壊罪」の容疑で書類送検されたのだろうか。刑事事件にくわしい冨本和男弁護士に聞いた。



●「使用できない状況」をつくれば器物損壊になる


「一般的な『壊す』というイメージと違うかもしれませんが、器物損壊罪における『損壊』とは、社会通念的にみて『物の効用を失わせる行為』を意味します。



携帯電話を持ち去られたら、持ち去られた人は携帯電話を使用することができなくなります。



少なくとも数日間、女性が携帯電話を使用できなかったということであれば、そうした状況を作り出した持ち去り行為が『物の効用を失わせた』と判断される可能性はあるでしょう」



冨本弁護士はこのように指摘した。



●「不法領得の意思」がないと、窃盗罪にはあたらない


ところで、他人の携帯電話を持ち去るという行為は、どちらかといえば、ものを壊すというより、ものを盗むというイメージに近い気がするが、「窃盗罪」にはならないのだろうか。



「『他人のモノを持ち去った』というと、モノを盗んだ、つまり『窃盗罪』にあたるのではないかと考える人もいるでしょう。



しかし、窃盗罪が成立するには、『盗んだモノを自分のために利用してやろう』という意思が必要だと考えられています。



つまり、携帯電話であれば、盗んだ携帯電話を自分で使ったり、売り払って代金を得たりしようと考えていた場合です



これを法律用語で『不法領得の意思』と呼び、それがなければ窃盗罪は成り立たないと考えられています」



今回のケースだと、どうなるだろうか。



「今回、報道されている事実によると、山下さんは、口論の様子を女性が撮影しようとしていたため、携帯電話を持ち去ったということです。



この事実からすると、撮影されるのを防ぐことが目的であって、携帯電話を自分で使ったり、売り払ったりする意思はなかったと考えられるでしょう。



そのため、『窃盗ではない』と判断されたのではないでしょうか。



山下さんが持ち去ったとされる携帯電話が、後日警察署に届けられたという事実も、これを裏付けていると思います」



●撮影を拒否するための「正当防衛」といえないか?


ただ、仮に山下さんが、撮影されるのを防ぐことを目的としていたのであれば、肖像権などを守るための「正当防衛」と主張できないのだろうか?



「正当防衛になるかならないかは、事実関係をくわしく検討しないとわかりません。



ただ、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影する行為は、人の肖像権を侵害する違法な行為です。



撮影に正当な理由がなかったとして、山下さんが携帯電話を持ち去った行為が、肖像権を守るための必要な措置であったといえるのであれば、『正当防衛』になり得ると考えます」



冨本弁護士はこのように述べていた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
冨本 和男(とみもと・かずお)弁護士
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。
事務所名:法律事務所あすか
事務所URL:http://www.aska-law.jp