2014年10月19日 10:41 弁護士ドットコム
いつも大量の人でごった返しているJR新宿駅南口の歩道。そこで、無許可の路上ライブを行ったとして、女性アイドルグループ「フレア・ラ・モードAce」のメンバー7人とマネジャーら3人が10月8日、道路交通法違反の疑いで書類送検された。
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報道によると、メンバーたちは新宿駅前で路上ライブを少なくとも9回行い、そのたびに、新宿警察署から注意を受け、誓約書を書いていた。新宿署は、マネジャーが「今後も続ける」と話したため、悪質性が高いとして摘発したという。
路上ライブは法的にどのような問題があるのだろうか。駅前の路上でミュージシャンたちが演奏している光景を見かけることはよくあるが、彼らも摘発されてしまう可能性があるのだろうか。エンターテイメント法務にくわしい高木啓成弁護士に聞いた。
「路上ライブでいちばん問題になりやすいのは、『道路の使用許可』についてです」
高木弁護士は、このように切り出した。
「東京都の道路は、国の法律である『道路交通法』と、東京都の公安委員会が定めた『道路交通規則』というルールによって規制されています。
具体的には、警察署長の『許可』を受けずに路上ライブをすると、3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられます」
道路でライブをすることに、許可が出るのだろうか?
「法律上、『現に交通の妨害となるおそれがないと認められるとき』には、警察署長が許可をすることになっています。
しかし、新宿駅の周辺は人通りが多く、路上でライブをすることは『現に交通の妨害となるおそれ』があると判断される可能性が高いです。許可を受けることは、とても難しいでしょう」
許可を受けずに路上ライブを行うと、すぐに逮捕または書類送検されてしまうのだろうか。
「路上ライブを一度行っただけで、すぐに逮捕されたり書類送検されたりすることは考えにくいと思われます。
ただ、警察官から口頭で注意を受けたり、『今後、付近で演奏を行いません』という誓約書にサインを求められることがあります。
今回のケースでは、何度も注意を受け、誓約書を書いたにもかかわらず、路上ライブを止めようとしなかったようです。そのため、悪質だと判断され、書類送検されたのでしょう」
道路の使用以外に、路上ライブで問題になることはないのだろうか?
「路上ライブで問題になりやすい点は、他に2つあります。
まず、『音』についてです。
騒音については、国の法律である『騒音規制法』と、東京都の『環境確保条例』や『拡声機暴騒音規制条例』などによって規制されています。
たとえば、一定のデシベル数を超える大きな音での拡声機(アンプ)の使用は、禁止されています」
もう1つの問題は、なんだろうか?
「それは著作権の問題です。
自分たちが作ったオリジナルの曲を演奏するのであれば、問題は起きません。しかし、他人が作った楽曲を、無断で演奏する場合は別です。
この場合、非営利、つまりお金を取ることを目的としない場合をのぞいて、演奏権の侵害となります」
路上ライブの場合、聴衆からお金をもらっていないことがほとんどのようだが・・・
「たしかに、コンサートなどと違って、路上ライブはお金を払わなくても聴くことができます。
しかし、そもそも路上ライブは、有料のライブにお客さんを集めるためや、CDを買ってもらうために行う場合が多いと思います。
この場合は、非営利とはいえず、やはり演奏権の侵害になってしまいます」
きちんと法律を守って路上ライブをするためには、アーティストは様々な点に注意する必要があるようだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
高木 啓成(たかき・ひろのり)弁護士
福岡県出身。2007年弁護士登録(第二東京弁護士会)。ミュージシャンやマンガ家の代理人などのエンターテイメント法務のほか、IT関係、男女関係などの法律問題を扱う。音楽事務所に所属し作曲活動を行うほか、ロックドラマー、クラブDJとしても活動している。
Twitterアカウント @hirock_n
SoundCloud URL: http://soundcloud.com/hirock_n
事務所名:アクシアム法律事務所
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