少子化による生産人口減少への対策として、いま日本では「移民の受け入れ」が議論されている。しかし先行事例のあるヨーロッパなどで移民による問題が起こっていることもあり、「受け入れ反対」の意見も根強い。
一方、「移民の国」アメリカでは、国の発展そのものが移民によって推進されているように見える。世論調査団体ピュー・リサーチ・センターによると、アメリカのIT企業TOP25の創業者の6割は、外国からの移民もしくは2世であることが分かったという。(文:沢水 蛍)
上位10社中、移民でないのは3社だけ
今年5月に公開された記事は、世界のトップIT企業の創業者に、いかに移民とその子孫が多いかの例をあげている。アップル創業者のスティーブ・ジョブズは、シリア系移民の子として生まれた後、アメリカ人の家庭に養子として迎えられた2世だ。
グーグルのセルゲイ・ブリンはロシア系移民1世で、マーク・ザッカーバーグらと共にフェイスブックを創業したエドゥアルド・サベリンはブラジル系移民1世。アマゾンのジェフ・ベゾスはキューバ系移民2世である。
オラクルのラリー・エリソンとボブ・マイナーは、ロシアとイラン移民の2世。クアルコムのアンドリュー・ヴィタビはイタリア移民1世、イーベイのピエール・オミダイアはフランス移民1世である。少し古いところでは、IBMのハーマン・ホレリスはドイツ系移民の2世だ。
このほかにも数多くのIT企業が、移民やその子孫によって創設されている。上位10社では、マイクロソフトとインテル、シスコの3社くらいだ。この状況について、米証券アナリストのメアリー・ミーカー氏は、こう分析している。
「彼ら移民がいなければ、今のアメリカIT業界は全く違ったものになっていただろう」
4000万人の移民は、総人口の13%に相当
ビジネス発展のためには有能な人材の確保は必要不可欠であり、たとえ移民であったとしても確保したいのが企業の本音だ。そこで企業は政府に対し、有能な移民の人々のために労働ビザを発給するよう長年政府に働きかけを行っているが、記事によると「その効果はまだ表れていない」という。
オバマ大領領は移民制度法案を進めようとしているのだが、共和党が優勢の下院議会はこれをよしとせず、なかなか成立には至らないのが現状だ。原因のひとつが、上下院議員や州知事らを選ぶ11月の中間選挙だ。保守派の反発が大きければ、選挙の結果にも大きく影を落とす。
それでもこれだけの人材を生み出しているというのだから、大したものだ。米国で今のところ労働ビザ受給者が多いのは、インド、中国、カナダ、フィリピン、韓国だ。技術大国インドが、米国ITビジネスで必要とされているのがよくわかる。
現在米国の移民は4000万人にものぼり、総人口の13%に相当する。これは1世紀前と同じ割合で、米国の人口の4分の1は移民、もしくは両親のどちらかが移民であるということだ。今後、移民の数はもっと増えていくことが予想されている。
四方を海に囲まれ、ほとんど単一民族のような日本と、米国を同一視するのは難しい。しかし、ダイナミックな経済で世界を牽引する米国が、こんな状況になっているということを、日本の読者は知っておいてもいいだろう。
(参考)What top tech execs have in common besides money (Pew Research Center)
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