いま、日本のお菓子が、外国人観光客のみやげものとして人気だ。成田空港にある日本メーカー製造の菓子店の売り上げは、ひと月で約3000万円と、2年前に比べて倍増しているという。
この波に乗り、日本の菓子メーカーは世界に打って出ている。2014年10月7日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、新規市場開拓の使命と会社の期待を背負い、各国に飛んだ営業担当社員たちの奮闘を紹介していた。
3万個の「ブラックサンダー」をアメリカに
台湾では、日本の有楽製菓が作る「ブラックサンダー」というチョコバーが大人気だ。価格は50円と日本より高めだが、ブラックサンダーを積んだ車が店に着くと客が殺到する。台湾の若者は「1個じゃなく箱買いするよ」と話していた。
有楽製菓は1955年創業の老舗菓子メーカー。しかし、他社のPBブランドなどの受注生産が多く、知名度も低かった。
数少ない自社ブランド商品の1つ、ブラックサンダーが爆発的に売れるようになったきっかけは、2008年に北京五輪に出場した体操の内村航平選手が「ブラックサンダーが好物」と公言したこと。以来、急激に売り上げを伸ばし、人気は台湾にも波及した。
河合伴治社長(61)は、この機に乗じてブラックサンダーをアメリカに売り込むことを決めた。今年8月、アメリカ販売用にパッケージを変えた3万個のブラックサンダーを前に、販売責任者の伊藤大介さん(37)は、河合社長からこんな檄を飛ばされた。
「世界に広げていくためには、必ず成功させなくちゃいけないテスト。1回でダメでも2回でも3回でも繰り返して、必ず売れるところまでやっていきたいので、その決意で。売れなかったら、帰ってこなくていいから」
翌月、米シアトルに飛んだ伊藤さんは、日系アメリカ人が経営するスーパー「ウワジマヤ」で試し売りをしたところ、「甘すぎなくていい」と好評で次々と売れ、正式に店に置いてもらえることになった。パッケージや商品名が良くないという指摘があったものの、まずは上々の滑り出しといえるようだ。
グリコの「ポッキー」を直販でインドネシアに
大手菓子メーカーのグリコは早くから海外展開を始め、主力商品のポッキーはすでに約30カ国で販売されている。しかし、これまでは現地の代理店に販売を任せていたため、商品名やパッケージが国によって違い、認知度はいまひとつだった。
そこで打ち出したのが、「ポッキーグローバルブランド計画」。1年半前から日本人駐在員を派遣して、販売のテコ入れに動き出したのだ。インドネシアは人口が日本の倍の約2億5000万人で、約4割が菓子の購買層である20歳未満。この巨大市場を任されたのはグリコインドネシアの田崎圭さん(41)だ。
インドネシアでは子供たちが学校帰りにおやつを買う習慣があり、500ルピア(約5円)の駄菓子がポッキーの競争相手でもある。おいしいだけではだめと考えている田崎さんは、「ポッキーも同じように7倍の価格で彼らを満たせるかどうか。それがポッキーの勝負です」と話す。
「ポッキー・オン・ザ・ロック」など新しい提案とイメージ戦略を得意とするグリコは、中学校や高校に「ポッキー宣伝部隊」を送り込み、1人1箱ずつ無料配布。生徒たちは早速ツイッターなどのSNSでポッキーを話題にしていた。
テレビCMでは、アイドルグループが「仲間たちとポッキーを分け合って食べよう」と呼びかける。街中では、真っ赤なポッキーカラーのユニフォームとバイクで30人の営業スタッフが小売店やスーパーを回り、動く広告塔の役目も果たす。赴任1年で2000万箱、売り上げを前年比5倍に伸ばした田崎さんは、こう力強く語る。
「そこの地域にいる人たちがみんなポッキーを知っていて、『インドネシアにポッキーあり』と確立できるまで帰れない。帰れないですね! そうでないと恥ずかしいです、正直」
世界が開拓していない新市場を探して
番組では、今年4月からマレーシア駐在員となったグリコの日下部友範さん(38)の営業活動も紹介していた。マレーシアで40年間「ロッキー」で売ってきた商品名を「ポッキー」に戻し、一からの勝負を託された。
マレーシアの首都クアラルンプールの大きなショッピングセンターには、売り場の一番いい位置はネスレのキットカットが独占していた。ここに食い込むだけでなく、日下部さんは世界の大手菓子メーカーがまだ手を付けていない地域を探し、ボルネオ島の個人商店や、さらに船でジャングルに面した小さな村の商店にまで売り込みをかけていた。
日本のお菓子は味だけでなく「形がくずれにくい」「チョコレートが溶けにくい」などの細かい工夫がなされている。欧米の菓子に比べると健康的なイメージもあり、海外でさらに広まっていくことだろう。番組に登場した営業マンたちからも「自社のお菓子は人々を幸せな気持ちにするもの」という自信と、市場開拓の強い意欲が感じられた。(ライター:okei)
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