日本GPに続いて、小林可夢偉が予選でチームメイトの後塵を拝した。しかも鈴鹿ではコンマ2秒だった差が、1週間後のソチではコンマ5秒に広がった。理由は日本GP同様、古いフロントウイング、古いフロア、古いサスペンション、古いエンジンカバーを装着しているからだけではなかった。
「フリー走行3回目でブレーキにバイブレーションが起きる問題が出た」(可夢偉)からである。
トラブル自体は予選前にブレーキを交換したことで収まったが、予選前最後のフリー走行で、可夢偉はタイムアタックに向けた最適なブレーキングポイントを試すことができなかったのである。
さらにトラブルは続いた。予選Q1の最後のアタックを開始した直後の第2コーナーで、ターンインしてクリッピングポイントを通過したあと、可夢偉は一瞬シフトアップができなくなるトラブルに見舞われた。
「シームレスシフトが何らかの原因でリカバリーモードに入って、ガクンとスピードを失ってしまった」という可夢偉のマシンは、ソチ・オートドローム名物の大きく左へ旋回するターン3で、スピードに乗ることができなかったのだ。
「あれでコンマ3秒は失った。それにブレーキのトラブルでセッティングもグダグダのままだったし、ブレーキングポイントも探りながらアタックしていたから、それがなければコンマ5秒は速く走ることができたと思う」
チームメイトが最大のライバルと言われるF1で、エリクソンに2戦連続で負けた可夢偉。そこにいかなる理由があろうと、ここでは結果がすべてだということも可夢偉は知っている。確かにチームメイトには負けた。だが、それでもベストを尽くした走りによって、可夢偉はロータスのパストール・マルドナドと、マルシャのマックス・チルトンの前に出ることに成功した。
実は、可夢偉には予選前のフリー走行でも走行制限がかけられていた。
「まだコースを学んでいる状況」という可夢偉。いよいよレースでコースを把握しはじめたとき、どんな走りを披露するのか。新しいサーキットで、可夢偉が描くレコードラインに注目したい。
(尾張正博)