モンツァ以来、ほぼ1カ月ぶりの開催となったGP2。舞台はF1と同じく、ソチ・オートドロームである。その新サーキットで、ふたりの日本人ドライバーが躍進した。
予選で3番手を獲得したのは、ARTグランプリの伊沢拓也である。終盤までポールポジションすら狙えそうな走りを見せたが、チームメイトのストフェル・バンドーンとカンポスのアルサー・ピックのふたり(彼らは1/1000秒まで同タイム)には及ばなかった。
「最終的には惜しかったのかもしれないですけど、初めての良い結果ですから、良い予選だったと思います」
躍進の最大の要因と考えられるのは、サーキットの習熟度だ。ソチ・オートドロームは今季が初開催。伊沢だけが“知らない”というディス・アドバンテージは、ここでは存在しないのだ。
「このサーキットはみんな知らないサーキットなんで、その点で僕と同じだというのが、僕に良い方向に行ってくれたのだと思います」と分析する伊沢。確かにライバルの多くは、キャリア初期からヨーロッパのサーキットを走り尽くしてきた連中。そのアドバンテージが薄れる今回は、伊沢にとってチャンスとも言える1戦だ。
また、グリップの高い路面も、好結果に寄与している。これまではヨーロッパのどのサーキットに行っても、「グリップが低い」と感じていたという伊沢。しかし今回は、「日本のサーキットの路面に似ている」と言う。
「このコースはすごくグリップするんです。自分の走りにタイヤが応えてくれるので、その点でも、良い条件は揃ったなと思います」
レースに向けて伊沢は、「スタートと最初に2周くらいで、ほぼ決まると思います。まずはスタートをしっかり決めたい」と語る。ただ、GP2には激しい走りをするドライバーも多く、「(事故に巻き込まれて)壁に当たるのは嫌だな」と心配していた。
一方佐藤公哉も、苦しい戦いを強いられたものの、結局は予選7番手と、まずまずのポジションを獲得している。
「いつもに比べれば全然良いところにいます。このコースは運によっては前に行くチャンスも出てくると思うので、そういうチャンスを逃さないようにしたい」
佐藤は予選最初のタイヤで、渋滞に巻き込まれてしまい、なかなかタイムを出すことができなかった。
「ティオ・エリナス(ラパックス)に何度も邪魔されて……。“ブレーキテスト”のようなことをされた時にパニックブレーキをしなければならず、それでタイヤにフラットスポットを作ってしまいました」
タイヤ交換後も渋滞の中にいた佐藤だが、最後のアタックで若干のミスがあったものの、7番手タイムを記録することに成功した。
「乗りやすかったので、チームが頑張ってくれたんだと思います。小さなミスをしたのも事実ですが、それがなくてもトップ5に入るのは難しかったかもしれません。チームメイト(ピック)がすごく良かったのに、僕のタイムが出なかった原因を、これからエンジニアと探ります」
分かっている範囲では、佐藤とピックの差はセクター2にあるという。ピックはコーナー手前で減速して、中と立ち上がりを重視するタイプ。佐藤は、コーナー進入で突っ込みすぎる傾向にあるという。この差が最も顕著に出るのが、セクター2だというのだ。
「90度コーナーが連続する区間なので、リズムが大事だと思います。頭では分かってるんですけどね。入り口を突っ込みすぎないというのは、中と後が余ってしまう気がして、なかなか難しいんですよ」
佐藤は明日のレースについて「いつもスタートを失敗してしまうので、なんとかポジションをキープしたい。今季はまだポイントを獲れていないので、まずはポイントを獲って、リバースグリッドの範囲内でフィニッシュしたいです。せっかく良いところからスタートできるので、みんなで力を合わせてやりたいと思います」と語ってくれた。
揃って上位からスタートすることになった、伊沢拓也と佐藤公哉。ふたりがどんな走り、戦いぶりを見せてくれるのか……。明日のレース1が、実に楽しみだ。
(F1速報)