2014年10月10日 18:41 弁護士ドットコム
札幌市の公園で9月下旬、矢が刺さって飛べない状態のカラスが発見された。昼下がりに散歩中の男性が通報。警察は悪質ないたずらとみて捜査しているそうだ。
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報道によると、カラスに刺さっていた矢は長さ約8センチ、直径およそ0.5センチのプラスチック製で、ダーツに使う矢のようだった。警察はカラスを保護し、矢を抜いたうえで、雑木林に離したという。
最近は、動物に対する「虐待」がしばしば問題となっているが、野生の鳥は法律でどのように保護されているのだろうか。ペットの虐待と、何か異なるのだろうか。動物をめぐる法律問題にくわしい渋谷寛弁護士に聞いた。
「カラスは、路上のゴミをあさって散らかしたりするので嫌いだという人もいます。しかし、いじめて良いということにはなりません」
渋谷弁護士は、このように切り出した。
「ペットの虐待を取り締まる法律といえば、『動物愛護管理法』の動物殺傷罪が挙げられるでしょう。しかし、今回の場合は、あてはまりません。
動物愛護管理法の動物殺傷罪は、対象範囲が一部の動物に限定されていて、野生のカラスは対象ではないからです」
この法律で「みだりに殺したり、傷つけたりしてはいけない」と定められているのは、あくまで「愛護動物」に限られている。ここでの愛護動物とは、まず「牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひる」。それに加えて、「人が飼育している」ほ乳類、鳥類、は虫類のことだという。
「つまり、鳥についてはペットとして飼っているなど、持ち主がいる場合だけが処罰の対象です。ある人が『持っている』わけではない野生のカラスは、対象になりません」
では、野生の鳥を保護する法律はある?
「野生の鳥は、鳥獣保護法という別の法律によって保護されています。許可なく、すずめ、カラスなどを含む野鳥を捕まえたり、野鳥の卵を巣などから取ってくることは、原則として禁止されているのです。野鳥を捕獲したり、卵を採取すると処罰されます」
今回の場合、捕獲とは限らないように思えるが・・・
「条文の『捕獲等』には、野生の鳥を殺したり、傷つけたりすることも含まれると考えられています。
この事件のカラスは、人が自分の物として『持っていた』ものではないので、野鳥にあたるでしょう。野鳥をダーツで捕獲・駆除することが、許可されるとは考えられません。
したがって、ダーツを投げてカラスを傷つけた人は、許可なく捕獲し(傷つけ)たことになり、鳥獣保護法違反として、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処される可能性があります」
渋谷弁護士は「どんな動物であろうとも、かけがえのない命があります。生き物をいじめることは慎みましょう」と締めくくっていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
渋谷 寛(しぶや・ひろし)弁護士
1997年に渋谷総合法律事務所開設。ペットに関する訴訟事件について多く取り扱う。ペット法学会事務局次長も務める。
事務所名:渋谷総合法律事務所
事務所URL:http://www.s-lawoffice.jp/contents_01.html