「ジュール(ビアンキ)の事故は非常に残念だし、早く良くなってほしいと思います。僕らは静かに祈ることしかできませんから」
今も病院で戦うライバルを気遣う言葉でカコミ会見を始めた小林可夢偉。その可夢偉本人も前回に引き続き、今回も楽な戦いではない。
「パーツは今回、前回から追加されたものはありません。スペアはないので、ストリートだということをしっかり意識して、無事にホームまでクルマを持ってくることが大事だと思っています」
前回の日本GPで、右フロントサスペンションのスペアがないと言っていた可夢偉。今回もそのパーツは補充されておらず、もし壊してしまえば、その時点で今回のグランプリが終了してしまうことを意味する。しかも、初開催のロシアGPは、コース脇の大部分をコンクリートウォールで囲まれた、“セミ”ストリートコース。細心の注意を払って、各セッションを走らなければならない。その上、こちらも前回に引き続きFP1のシートをロベルト・メリに明け渡さねばならず……初開催サーキットの習熟時間が、他と比べて1時間半短くなってしまう。
「FP2の最初から練習のつもりでしっかり走って、FP3の最初から全開で走れるように、組み立てていくしかないですね」
F1初開催のソチ・オートドロームだが、鈴鹿で可夢偉は、ゲーム「F1 2014」で試走している。
「ゲームでやりましたが、実際に歩いてみると、より狭く感じました。ランオフエリアも狭いので、ブレーキにトラブルが出れば、完全に刺さりますよね」
コースの印象としては、アブダビやシンガポール、そしてバレンシアに似た印象を持ったと語る可夢偉。
「90度コーナーが多く、ストップ&ゴーのイメージが強いですね。ただ(オリンピックのメダルプラザを回り込む)ターン3は、タイヤには非常に厳しいかもしれませんね。(サーキットデザイナーのヘルマン)ティルケさんはトルコの“ターン8”を模して作ったと言っているみたいです。しかもこのコーナーは若干オフキャンバー(アウト側の路面が低くなるように、カントがついている)なので、アンダーステアが出ると思います」
鈴鹿ではライバルたちに太刀打ちすることができなかった可夢偉。しかし、ロシアでは、前回よりは戦えるかもしれないと言う。
「前回よりは少し良いかもしれない。しかし、パーツの状況は前回と一緒なので、まずは完走を目指すしかないです。厳しいレースにはなると思いますが、しっかり戦って、レースしたいです。あと、今回は(ウラジーミル)プーチン大統領がいらっしゃるというので、お会いしたいですね」
まだまだ厳しい戦いが続く可夢偉。多くのドライバーが初経験のこのソチ・オートドロームで、可夢偉の適応力がどれほどまでに活かされるのか、注目したい。