BSジャパンで「ワーキングデッド~働くゾンビたち~」という新番組が始まった。コミュニケーションができず、行動は理解不能、脳みそは思考停止状態の「働く屍」を「ワーキングデッド=働くゾンビ」と呼び、様々な事例を紹介するという。
2014年10月2日(木)23時半から放送の初回OAは、他人の手柄を自分のものだと吹聴する「アレオレデッド」や、仕事もせずに日がなパソコンゲームをやっている「ソリティアデッド」を、再現ドラマ形式で取り上げていた。
「アレオレ」が多いIT、金融、建設、広告
都内の広告代理店に勤務する鈴木明さん(35歳)は、ある音楽イベントを立ち上げ大成功を収めた。ところが大沢(38歳)という先輩社員が、社内で「あれは俺がやった仕事だ」と自分の手柄のように吹聴し、女性社員たちの話題の的になっていた。
腹が立った鈴木さんは思わず「アレオレデッド」の大沢を突き飛ばしてしまい、社内で暴力行為を働いたとして2週間の出社停止を受けた。鈴木さんは思い悩み、出社停止が明けた今も出社することができずカウンセリングを受けているという。
事情を知る同僚の女性たちは、大沢について「あれだけ自分の手柄をしたいというエネルギーがあるなら、それを仕事にぶつけたらいい」と冷ややかに見ているが、間違った噂を上司に鵜呑みにされた鈴木さんには、たまったものではない。
番組が実施した新橋100人アンケートによると、こうした「アレオレデッド」が1番多いのは、IT・通信などのベンチャー企業だという。次いで金融、建設、広告、不動産、飲食関係と続いた。
いかにも手柄の取り合いが横行しそうな業界だが、番組ゲストでMy News Japan編集長の渡邉正裕氏によると、「ここ10年くらいで増えてきた」という。
「トヨタや日本生命などの大企業は、人事部が長期の評価を蓄積するが、ベンチャー企業は成熟途上で人事部に力がなく、現場・社長が評価をする。1000人くらいの規模になると社長は見きれないので、ボードメンバーに入った人の手柄になってしまう」
年功序列から成果主義などに変化しつつある日本企業の体質が、「アレオレデッド」を生み出すという背景があるようだ。
自分が失敗したら「アレカレ」に大変身
「アレオレデッド」が厄介なのは、自分が失敗したときには逆に「アレは彼のせい」と責任をなすりつける「アレカレデッド」に変わることだ。
対策としては、「社内で偉い人とのコネクションを作る」こと。ベンチャー企業だと、社長とのコネは新入社員の採用段階で作れるが、中途採用だと被害に合いやすい。
また、日がなパソコンでゲームをしている「ソリティアデッド」について、本当にいるのかと都市伝説扱いされることもあるが、どうやら「いる業界」と「いない業界」がはっきり分かれているようだ。
外食産業など数円単位で勝負している業界にはいないが、大手出版や広告、放送、それから税金で運営する特殊法人などの中高年に多く見られる。労働組合が強く、年功序列が維持されている会社に多いというのはうなずける。
番組では、毎朝出社して机に座った途端、パソコンのトランプゲームを始め、会議中も昼休みもやっている山田氏(59歳)が登場。同僚の女性社員は様子をこう話す。
「背後に人が通れば、バッと隠そうとしますね。バレてるんですけど。そういうのを見ていると、ないわ~ってなりますよね」
働かなくても「ずーと大人しくしてれば十分」
ところが、この「何も生み出さない人的不良債権」に見えるワーキングデッドも、会社にとって存在してもらうだけで十分な価値がある。
実は彼らは「外食チェーン店のオーナーが父」「有名な政治ジャーナリストが父」「業界最大手の製薬会社の創業者が祖父」といった太いパイプを持っているのだ。ソリティアデッドの上司は語る。
「彼らはいわゆる会社の人質です。(問題を起こさず)ずーっと大人しくソリティアに夢中になっててくれれば、それで十分です」
番組の再現VTRは、ゾンビメイクを施したゾンビ社員を登場させるなど、コミカルなタッチで「会社の問題」を風刺している。しかし多くの人が実際にゾンビ社員の被害やしわ寄せを受けていると思うと、あまり笑ってばかりいられない気もした。(ライター:okei)
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