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「中央アジアの北朝鮮」 富める独裁国家トルクメニスタンに、日本のテレビが入った

2014年10月08日 18:40  キャリコネニュース

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西側をカスピ海に面し、イランとアフガニスタン、ウズベキスタン、カザフスタンと国境を接する国、トルクメニスタン。個人崇拝と鎖国状態で「中央アジアの北朝鮮」と呼ばれてきたトルクメニスタンでは、これまでほとんど海外のメディアが入国を許されなかった。

そんな中、日本の報道番組として初めてテレビ東京に取材許可が下りた。2014年10月6日放送の「未来世紀ジパング」は、池上彰をナビゲーターに迎えてトルクメニスタンを紹介した。番組MCのSHELLYが行った現地取材では、常に政府の役人が監視の目を光らせ、突然撮影中断を命ぜられる緊迫感もあったが、意外にも開放路線へ向かっているという。

「報道の自由度ワースト3位」から脱却中

首都のアシガバートで国民に話を聞くと、「(この国に)直すべきところなんかないわ。ここは世界一の街なんだから」「尊敬する大統領様の健康を祈っています」と、大人から子供まで大統領への尊敬と感謝を語る。

アフリカ北東部のエリトリア、北朝鮮に次ぐ「報道の自由度」ワースト3位とされるトルクメニスタン。現地の書店で目立つのは大統領関連の本ばかりで、スポーツ新聞ですら1面トップは大統領を讃える記事だ。国営テレビ局を取材した際、「自由に報道できないのですか?」と切り込むと、局の女子アナはこう答えた。

「いいことばかり放送していると言われますが、世の中は悪いニュースであふれています。私たちは国民に明るいニュース、政治・経済・文化などあらゆる面での成功と偉業を伝えたいのです」

悪いニュースを報道しないことが普通であり、社会にとって必ずしも良くないことだと気づいてない様子だったとSHELLYは驚いていた。

世界一の屋内観覧車など、「世界一」にこだわった建造物や金色に輝く大統領像などは、ニヤゾフ前大統領が作ったものだ。極端な独裁政策を推し進めていた2006年に突然亡くなり、2代目のベルディムハメドフ大統領は徐々に開放路線へ向かっているという。

トルコやロシアの衛星放送が娯楽として認められ、外国の芸術やインターネットも一部を除き解禁。それまでは「地方に図書館は必要ない」と廃止、「病気になったら首都に来ればいい」と首都以外の病院が閉鎖されていたが、それも解禁になった。

富の源泉はガス田。「日本ブーム」の兆しも

厳しい言論統制があるとはいえ、国民の暮らしぶりは豊かだ。400平米の豪華マンションに住むある家庭は、六男三女の子だくさん。平均的な収入という主人はこう話す。

「電気・ガス・水道は無料です。このマンションも1億円以上するでしょうけど、私は1円も出していません。タダでもらったものです」

全国民が医療費無料、学費も大学まで無料、さらに子どもが8人以上いる家庭には「エリートハウス」が無償提供されるというのだ。富の源泉は2006年に発見された、東部のガルキニシュガス田。埋蔵量は世界で第4位の規模だ。

運営は国営のガス公社で、働いているのはトルクメニスタン人だが、この施設の設計や建設を行ったのは中国の国営企業だ。ガスもパイプラインで中国までつながり輸出されている。

郊外の巨大バザールで、SHELLYが目を留めたのは「KIKURA JAPAN」など日本風のメーカー名が入った電化製品。本当に日本製なのか店員に尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「中国から来ているんだけど、日本で作っているものとして売っているよ。この国で日本製品のイメージはすごくいいんだよ」

もちろん本物の日本製品も進出しており、人気の自動車メーカーはトヨタで、60%のシェアを誇る。さらに2011年、川崎重工業と双日が化学プラントの建設を約600億円で受注し、現地の巨大プロジェクトを進めている。国立アザティ言語大学では日本語学科が最も人気があるという。

池上彰「スタンが変わる」

日本の報道番組取材に応じ始めるなど、徐々に開放政策に舵を切り始めたトルクメニスタン。池上彰は、天然ガスのほかにもカザフスタンやウズベキスタンなどは石油や金などの資源が豊富な地域で、外国からの「…スタン」がつく国への見方も変わってきていると解説したうえで、こうまとめた。

「今後のさらなる発展のためには、独創的な発想力、表現や言論の自由などを認めることが大切。そのことに気づけば、言論統制も少しずつでも変わってくるのではないか」

セレモニーに現れた大統領の映像は、国民の歓待ぶりが国王そのものだった。しかし取材を許された範囲だけでは分からない、影の部分もきっとあるだろう。資源は豊富だが言論や表現の自由がない国で、人はどこまで幸せと言い切れるのかと考えさせられた。(ライター:okei)

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