自意識過剰で自己愛の強い若者を対象にした就職サービス「ナルシスト採用」のイベントが10月7日、東京・目黒で開催され、参加者と企業のマッチングが行われた。
ナルシスト採用は、NPO法人キャリア解放区が企画。既存の就職活動への違和感を押し殺さずに自分の感覚とこだわりを持って物事を考える若者を集め、企業との接点を模索するというコンセプトだ。新卒者と、29歳までの既卒者が対象になっている。
参加者に東大京大、早慶など高学歴が続々
7月に参加者への説明会を実施。その後複数回にわたった開催されたワークショップでは、参加者同士が社会への違和感などについて意見交換してきた。
キャリア解放区の納富順一代表によると、参加者は約30人で、大学4年生が約6割で既卒が4割。全体的に高学歴で、東大、京大、早慶、ICUなど有名大の学生や卒業生もいるという。
旧帝大卒の28歳の男性は、新卒で金融業界に入るも熾烈な出世競争が嫌になり3年で退職。その後は大手小売チェーンで働いていたが、現在就職活動を再開し、ネットで知ったナルシスト採用に興味を持ち応募した。
「自分も『根拠のない自信』があるので、ある種ナルシストだと思う」
ナルシスト採用に参加している企業は8社。ITベンチャーが中心だが、東証一部上場企業や、就活生にも人気が高い外資系大手ITコンサルの名前もあった。
今回のイベントは、企業と参加者が初めて顔を合わす場だ。参加者が3~4人ごとのテーブルに分かれ、そこに企業の担当者が入って交流する。自分たちで酒やつまみを用意し、企業をもてなすグループもあった。
話すテーマは基本的に自由で、将来の夢や趣味などなんでもいい。会場までヒッチハイクでやってきたという京大生は、現在大学6年生。一応3年間就職活動をしたが、あまり本気になることができなかったという。
「普通の就職活動では、企業が欲する人物像に自分をはめていかなければならない。そこに違和感を持った。そのままの自分を見て、気に入ってくれる企業で働きたい」
趣味で小説を書いているという女子大生は、「読者のことはどうでもいい。自分の理想のキャラや物語を追求することに意義がある」とナルシストぶりを発揮。あくまでも自分の価値観が絶対だという。これには企業の担当者から、「もっと多くの人に読んでもらいたいのなら読者のことを考えてもいいのでは」とアドバイスが出ていた。
ゆとり世代に足りない「積極性」や「自発性」に注目
いわゆる普通の就活生と比較すると、かなりアクの強い参加者が多いようだが、企業の方はどういった意図で参加しているのか。
大手IT企業の担当者は、「既存の新卒採用では面白い人材がなかなか採れない」と語る。普通に採用をすると、明るくて話をするのがうまい学生ばかりになるが、そうした「就活強者」だけだと組織が硬直化し、新しいものを作れなくなってしまうという。
従業員120人のITベンチャー、ディースタンダード(東京・銀座)の採用担当者も、「ちょうど会社が大きくなってきたところなので、サラリーマン的ではない『ぶっ飛んだ人』が欲しい」と期待する。
参加者については、「みんな頭がいい」という印象を持ったといい、趣味になると熱く語りだす参加者が多く「受け身の姿勢が多い他のゆとり世代とは違う」と評価する。
他の企業も、ナルシストたちの「個性」と「積極性」「自発性」に注目しているようだ。「私の本業はこれです!」と、美少女キャラに扮するコスプレ写真を周囲に見せびらかしていた参加者の一人は、ITベンチャーの担当者に気に入られ、その場で内定をもらっていた。早くも成果が出ているようだ。
ナルシスト採用では今後、個別企業ごとに参加者との交流会を開催する。参加者と企業がお互いに納得すれば、随時内定が出るということだ。
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