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「イスラム国」の戦闘員になりたかった!? 北大生の容疑「私戦予備・陰謀罪」とは?

2014年10月08日 11:21  弁護士ドットコム

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イスラム過激派組織「イスラム国」に参加するためにシリアに渡航しようとしたとして、北海道大学の学生(26)ら複数の日本人が「私戦予備・陰謀罪」の容疑で、警視庁公安部から家宅捜索や任意の事情聴取を受けていたことが10月6日に報じられた。


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報道によると、学生は、シリアで「イスラム国」の戦闘員として働くつもりで、10月7日に日本から出国する予定を立てていたという。関係者から情報提供があり、警視庁公安部が内偵捜査をしていたそうだ。



このニュースについて、ツイッター上では「刑法ゼミだけど勉強したことない」「こんなのあるのか」など、「私戦予備という罪がどんな罪なのか知らない」という声が多くつぶやかれていた。刑法の「私戦予備罪」とは、いったいどんな犯罪なのだろうか。刑事事件にくわしい田沢剛弁護士に聞いた。



●私戦とは「外国への私的な戦闘行為」のこと


「私戦予備・陰謀罪(刑法93条)は、外国に対する私的な戦闘を、(1)計画・準備する行為(予備罪)や、(2)二人以上で合意して計画する行為(陰謀罪)を、処罰する犯罪です。



ここでの『私的な戦闘』とは、国の命令によらずに勝手に戦闘をすることです。そして、『戦闘』とは、武力によって組織的な攻撃をしたり、防御したりすることです」



つまり、国の命令によらずに、戦闘の準備をしたり、戦闘計画を立てたら処罰されるということだ。では、実際に「私戦」を行ったらどうなるのだろうか?



「一般人が外国と戦争をするなんて現実的にはあり得ないと考えられたため、私戦を実際に行ったケースを罰する規定はありません。



万が一、私戦が実行された場合には、騒乱罪、殺人罪、放火罪、強盗罪その他の規定を適用して処罰するしかないようです」



●外国と戦闘行為を行うことは、国交の破壊につながる


そもそも、こうした行為をなぜ取り締まる必要があるのだろう。ネット上では「海外のことなんだから、勝手にやらせておけ」といった意見も見かけたが・・・。



「国民が勝手に外国に対して戦闘をしかけたら、その国と日本との国交を破壊することにもなりかねません。そうすれば、平和主義を掲げた憲法9条の精神に反することにもなります。そのため、処罰の対象とされているのです」



これまで実際に処罰された例はあるのだろうか。



「細かく調べたわけではないので何とも言えませんが、私は、聞いたことがありません」



私戦予備・陰謀罪違反の刑罰は、「3月以上5年以下の禁錮」となっている。普通の犯罪だとある「懲役」がなくて、「禁錮のみ」なのは、どうしてなのだろうか。



「私戦予備の罪に問われる人は、政治的ないし宗教的な信条に基づく確信犯であることが予想されます。他の囚人たちと一緒に、刑務作業を科すことはなじまないと考えたのでしょう」



さらに、この罪は「自首」をしたら刑を免除されるのだという。なぜ、そんな「特典」があるのだろうか。



「私戦は重大な行為です。私戦を実行することを少しでも未然に防止するために、『自首したら刑を免除する』という恩典を与えているわけです」



田沢弁護士は「昔司法試験のために勉強したことを思い出しながらになりますが・・・」と述べながらも、このように解説してくれた。20年のキャリアがある田沢弁護士でも、これまで実務で出会ったことのないルール・・・なぜそのルールがいま、このタイミングで利用されたのか、今後の展開に注視していくべきなのかもしれない。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
田沢 剛(たざわ・たけし)弁護士
1967年、大阪府四条畷市生まれ。94年に裁判官任官(名古屋地方裁判所)。以降、広島地方・家庭裁判所福山支部、横浜地方裁判所勤務を経て、02年に弁護士登録。相模原で開業後、新横浜へ事務所を移転。得意案件は倒産処理、交通事故(被害者側)などの一般民事。趣味は、テニス、バレーボール。
事務所名:新横浜アーバン・クリエイト法律事務所
事務所URL:http://www.uc-law.jp