前回社内シスアドの仕事について書いている途中で、ふと思い出した社内シスアド事例について今回は書かせていただきます。知人から聞いた話なのですが、こういう悲惨(?)な目にあっている方も多いのではないでしょうか。
「一般事務」のパートタイマーとして入社したFさん(仮名・女性)。元々SEをやっていたのですが、結婚・出産を機に前の会社を退社。子どもが幼稚園に入ったので、時短・扶養内勤務が可能なこのA社に入社いたしました。(文:光明隠歌)
「パソコンに詳しい」と知られてしまったために
しかしこのFさん、履歴書を見れば分かる通り、一般事務ではもったいないくらいパソコン関係の資格を豊富に持っていました。学生時代にはC言語やVisual Basicなどといった言語も勉強しており、HTMLやマクロなどの知識も有していました。
そして入社したA社は、不幸なことに、社内にパソコンサポートをしてくれる「社内シスアド」のような部署は存在しませんでした。
「Fさん、確かパソコン詳しかったよね?」
との問いに、「え、ええ……」と答えてしまったがために、彼女は勝手に「社内シスアド」業務を押し付けられることになってしまいました。
もちろん、パートですから上司命令は絶対です。派遣社員と違い、契約内容にないと言って拒否することもできません。しかも、彼女の役職は「一般事務」のまま、何らかの技能手当などつくこともありませんでした。
もっとも、技能手当をつけると月給が増えてしまい、「扶養内勤務」ができなくなってしまうため、最初に彼女が断ったのも原因になってしまったようなのですが…。これが後々めんどくさいことになります。
パソコンに詳しい女性が入ってきたということになると、これまで他人に聞けなかった社員の質問がすべてFさんにやってきます。
「Fさん、Excelのここがよくわからないんだけど」
「Fさん、このシステムのパスワード忘れた!」
「Fさん、パソコンが起動しないんだけど!!」
SE時代の癖で「残業やって当たり前」に
Fさんも最初のうちは、親切心もあって普通に対応していたのですが、徐々に彼女の本来の業務ができなくなる程にサポートを強いられるようになりました。これでは本来の仕事ができないということで、たまりかねたFさんは上司に相談。その結果、
「事務の仕事は、他の人に振る。Fさんはパソコンサポートに徹して」
という、よくわからない結論になってしまいました。ちなみに、この段階でも職種は「一般事務」のままです。給料などに変化はありません。
そのうち「Fさん、確かホームページ作れたよね?」という理由で、会社のWebページの制作管理をさせられるようになりました。パソコンサポートの合間にということでしたが、緊急で告知しないといけないお知らせなどは、最優先で更新しないといけません。
それでもFさんの能力的には、ギリギリこなせていたようです。これを見た上司は、こんなことを言い出しました。
「Fさん、プログラム組めるよね? 社内で使う便利なプログラムとか作ってよ」
「ついでにシステムの入れ替えあるから、そっち手伝ってよ。俺達よくわからないし」
断りきれずに引き受けてしまったFさん。残業をしないと仕事が終わらなくなってきました。彼女も無理な仕事は断るか、時間になったら帰ればいいのに、SE時代の癖で残業を当たり前だと考えてしまったのです。
扶養の条件を守るために「サービス残業」に発展
その結果、本当に働いた勤務時間通りに書くと、扶養内勤務の条件から外れてしまうことが判明しました。となると、扶養外の通常勤務にすればいいだけなのですが、どうも会社の社会保険加入に入ると、今までより手取り給金が減るらしいのです。
結論として、彼女の残業はすべてサービス残業扱いになりました。外部から見ると、この案件は「ブラック企業」状態なのですが、当のFさんは全くそういう意識がなかったようです。
本人曰く、「結婚前のSE時代よりはまだラクだからブラックじゃない」と。ああ、こうやって無自覚なブラック労働が作られるのだなと私は思いました。
なお、当のFさんですが、そんな状態で1年ほど働いたところで2人目を妊娠したため、その会社を退職したそうです。
「すごく残念がられてねー。子ども大きくなったらまた戻ってきてね、って言われてるの」
そう嬉しそうに話すFさんを見ていると、「ブラック企業って、ある種の洗脳に近いなあ……」と思うのでした。
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