2014年10月07日 12:31 弁護士ドットコム
水泳・日本代表の冨田尚弥選手が、韓国の仁川で開かれたアジア大会の競泳会場でカメラを盗んだとして、韓国で略式起訴処分を受けて帰国した。今度は、冨田選手の「水泳選手としての処分」を決めるため、日本水泳連盟の倫理委員会と常務理事会が10月7日、開かれる。
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報道によると、冨田選手は9月25日、競泳会場で韓国メディアのカメラマンが席を離れた際に、一眼レフのカメラを持ち去ったとされる。冨田選手は9月29日、韓国の仁川地検によって窃盗容疑で略式起訴され、罰金100万ウォン(約10万円)を納めたという。
海外で刑事処分を受け、日本でも水泳選手としての処分を受けることになる冨田選手だが、日本の刑法には、日本人が国外で犯した罪について、責任を追及できるという規定があるそうだ。冨田選手は、日本でも刑事処分を受ける可能性があるのだろうか。足立敬太弁護士に聞いた。
「日本の刑法3条には、こんな風に書かれています。『この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する』。
そして、『次に掲げる罪』として列挙されている犯罪のうちに、窃盗罪が含まれています(同条13号)。
つまり、日本国民が窃盗行為をした場合、その場所が日本の主権が及ばない外国で、被害者が外国人であったとしても、『日本国民である』という理由で、日本の刑法が適用されることになります」
日本の刑法が適用されるということは、「日本でも処罰される可能性がある」ということだ。すでに外国で刑事処分を受けていたとしても、同じなのだろうか?
「外国で犯罪行為をした者が帰国した場合、外国で刑事裁判を受け、刑を科された後であっても、日本の刑事裁判権が及びます。
したがって、あらためて日本国内での裁判が行われ、有罪判決が下されれば、刑の執行が可能となります」
犯罪行為をした国と日本の、両方で刑罰を受ける・・・いくら罪を犯したとはいえ、ずいぶん「踏んだり蹴ったり」だ。
「たしかに、外国でそれなりの刑事処分を受けているにもかかわらず、この点を何も考慮しないで処罰を与えることは、二重に刑罰を与えることになりかねません。
そこで、すでに外国において言い渡された刑の全部または一部の執行を受けたときは、刑の執行を減軽し、または免除するというルールがあります(刑法5条)」
二重に罰を受けることがないよう、一定の救済措置があるようだ。今回のケースは、どうなるだろうか。
「冨田選手は今回、すでに韓国で罰金刑を受けたということですから、もし日本で起訴されて裁判になれば、刑法5条のルールが適用されるでしょう。また、これまでの経歴や余罪の有無などを確認した上で、起訴猶予になる可能性もあるでしょう」
足立弁護士はこのように述べていた。
活躍が期待されていた冨田選手がなぜ、こんなことになってしまったのか・・・。その理由はうかがい知れないが、冨田選手はまだ25歳の前途ある若者。今回の事件をバネに再起を図ってもらいたい。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
足立 敬太(あだち・けいた)弁護士
北海道・富良野在住。投資被害・消費者事件や農家・農作物関係の事件を中心に刑事弁護分野も取り扱う。分かりやすく丁寧な説明だと高評価多数。
事務所名:富良野・凛と法律事務所
事務所URL:http://www.furano-rinto.com/