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ネット放送「ユーストリーム」保存期間の短縮に「不満続出」 サービス変更を延期へ

2014年10月06日 17:51  弁護士ドットコム

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大幅なサービス変更を10月10日に行うと表明していたネット放送「ユーストリーム(Ustream)」の運営会社は10月6日、変更する日を当初の予定よりも3週間遅らせ、11月1日に延期すると発表した。突然のサービス変更について、利用者から「猶予期間が短すぎる」などと不満があがっていたことに対応したかたちだ。


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ユーストリームは、ネットでライブ放送をできるサービス。音楽やスポーツ、討論番組を手軽な機材で簡単に生中継できるサービスとして、多くの個人や企業に利用されている。「ネット生放送」を核にしたサービスだが、放送した映像をサイト上に録画保存して公開する機能もある。



これまで、その保存期間は無期限とされていたが、ユーストリームの運営会社は9月30日、アーカイブ映像を30日間で自動削除すると発表。「録画」を削除されたくないなら10月9日までに「有料プラン」に加入するよう利用者に呼びかけた。有料会員になることを希望しない利用者は、10月9日までに録画をダウンロードしないと、せっかく放送した映像を失ってしまうことになったのだ。



●「発表から削除までの期間が短すぎ」と反発する利用者たち


この発表に対して、ユーストリームの利用者からは「突然だ」「猶予期間が短い」「無神経」といった声があいついだ。国際大学グローバルコミュニケーションセンター講師の庄司昌彦さんは10月2日、ツイッターで「発表から削除までの期間が短かすぎ。少なくとも1ヶ月、できれば数ヶ月前から予告して欲しかった」とコメントした。



記者会見やデモ中継のライブ放送にユーストリームを利用していたインターネットメディアIWJは10月3日、ユーストリーム上に保存していた推定6000~7000本の映像を保存するための「支援」を呼びかけた。あまりにも急で、作業量が膨大なため、「スタッフ総出で対処しようとしても対処しきれません」「時間がありません」とサポートを求めた。



録画映像の保存期間を「無制限から30日間へ」と変更するのは、利用者にとって非常に影響が大きいだろう。運営会社が一方的にそのような変更をおこなうのは、問題ないのだろうか。



「利用者は提示されたサービス内容を前提に、サイトを利用していますので、サイト側が何の制約もなく一方的にサービス内容を変更することができるわけではありません」



このように説明するのは、消費者問題にくわしい上田孝治弁護士だ。だが、一方で、上田弁護士は「サイト側は当初のサービス内容を永久に提供すると約束しているわけでもありません。特に無料のサービスの場合、サービスの廃止を含めた内容の変更もやむを得ない面があります」と述べる。



●「不利益の大きさをふまえた相当程度の予告期間が必要」


実際のところ、ユーストリームの利用規約にも、運営会社の判断でサービスの変更ができるという旨の記載がある。



しかし、運営会社の判断でサービス内容の変更が許されるとしても、利用者に告知する期間が「10日間」しかないのは、短すぎるのではないだろうか。



「これまでサービスを使ってきた利用者からすれば、サービスがそのまま継続すると期待していたはずです。それにもかかわらず、映像の保存期間を無期限から30日間に縮めるというのは、サービス内容の突然かつ大幅な不利益変更といえます。



さらに、この変更によって、保存期間が無期限であることを前提に保存してきた過去の映像データについて、多くの利用者はダウンロード等の具体的な対応をしなければなりません。相当な時間と労力が必要になるでしょう。



したがって、今回の場合、サイト側は、このような利用者の不利益の大きさをふまえた相当程度の予告期間を設定する必要があります。少なくとも、予告から実施まで10日間では短すぎると言わざるを得ません」



上田弁護士はこのように指摘していた。



●サービス変更の時期が「11月1日」に延期された


その後、ユーストリームの運営会社は、サービス変更の開始日を当初の「10月10日」から「11月1日」に延期すると発表した。利用者のなかには、ユーストリームに対して延期を求める働きかけをした人もいるようだ。そのような「不満」の表明が、運営会社の判断を変えさせたといえる。



当初の発表日からすると、告知期間は「10日間」から「1カ月間」に延びたことになるが、これについて評価はどうなのだろう。



「利用者によるダウンロード等の手間にもよりますが、サービス廃止ではなく、サービス内容の変更なので、ある程度、妥当な期間なのではないでしょうか」



上田弁護士はこう述べたうえで、利用者に向けて次のようにアドバイスしていた。



「特に無料のサービスの場合、サービス内容の不利益変更や廃止によって、利用を続けたい人に対して、有料サービスへ移行するよう促されることが少なくありません。サービスを利用する際には、あらかじめそのような可能性を頭に入れておいたほうがよいでしょう」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
上田 孝治(うえだ・こうじ)弁護士
消費者問題、金融商品取引被害、インターネット関連法務、事業主の立場に立った労働紛争の予防・解決、遺言・相続問題に特に力を入れており、全国で、消費者問題、中小企業法務などの講演、セミナー等を多数行っている。
事務所名:神戸さきがけ法律事務所
事務所URL:http://www.kobe-sakigake.net/