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来年から「相続税増税」 不動産評価のポイントとなる「路線価図」の見方とは?

2014年10月05日 12:31  弁護士ドットコム

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2015年1月から相続税の増税で、土地や建物など、不動産所有者の家族の多くが頭を悩ますことになりそうだ。たとえば相続人が一人の場合、これまでは相続財産が6000万円以上の場合に課税されていたが、今後は3600万円以上となり、課税対象が大きく広がるのだ。


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3600万円といえば、都心では、土地つきのマイホームに住む家族の多くが対象となりうる。「うちには大した財産はないから」と他人事だった人まで、うかうかしていられなくなる。



ただ、あきらめるのはまだ早い。相続した土地が「利用価値が低い」と評価されれば、大幅に減税されることがあるという。相続税を払いすぎないために、何を知っておくべきなのだろうか。相続税にくわしい足立仁税理士に聞いた。



●「路線価」はネットで調べることが可能


そもそも、相続税の申告で、土地の評価額はどのように決まるのだろうか。



「市街地の土地は『路線価方式』で評価します。バブルのころ、『銀座の鳩居堂前の通りに面する土地が、今年は平米あたり3000万円を超えました』なんてニュースが、夏によく流れていたのを記憶している方も多いのではないでしょうか。この『平米当たりの金額』が路線価です。



路線価は、道路に着目して、土地の評価額を定めたものです。つまり、太い幹線道路に面した土地ほど利用価値が高いものとして、平米当たりの評価額が高く設定されます。逆に、細い道路に面した土地は低く設定さます。



路線価は、インターネットで簡単に確認できます。検索サイトで『路線価』と入力すれば、すぐに路線価を掲載した国税庁のホームページが見つかるはずです。不動産の住所から、該当する路線価図のPDFをダウンロードしてください」



路線価図はどのように見ればいいのだろうか。



「路線価図を見ると、不動産の接する道路に『300C』といった数字が書かれています。この数字部分が路線価です。千円単位で記載されているので、『300』なら『平米当たり30万円』を意味します」



●借地の場合は「借地権割合」に注目


では、具体的な評価額をどう計算すればいいのだろうか。



「路線価に面積をかけるだけです。面積が100平米なら、路線価30万円x100=3000万円ですね。正確な平米数は、土地の登記簿謄本で確認する必要がありますが、とりあえずの試算であれば、坪数に3.3をかけて平米数に直したもので大丈夫です。



路線価は、税務署が毎年の不動産市況を参考に決めているのですが、公示価格のだいたい80%ぐらいを目安にしています。高すぎると納税者から批判されるので、低めに設定しています」



家が借地だった場合、何の価値もないのではないか。



「いいえ、借地にも価値はあります。『借地権割合』に着目する必要があります。『借地権』とは、他人の土地の上に自分の建物が建っている状態のことです。都市部ではこの『借地権』の状態になっている土地が多くあり、借地人、つまり建物の所有者は非常に強い権利を持っています。その権利の割合が『借地権割合』です。



『借地権割合』は路線価の『300C』といった表示のアルファベットの部分で確認できます。路線価図の上の部分に一覧表がありますが、借地権割合は、A90%からG50%まで段階的に設定されています。一等地ほど『借地権割合』は高くなります。



たとえば、路線価評価額1億円の土地があったとして、借地権割合がC70%の地域なら、借地権の価値が7000万円ということになります」



●マイナスポイントがある土地は評価が下がる


では、路線価の評価を引き下げるには、どのような方法があるのだろうか。



「奥行きが短い、長い、間口が狭い、形が正方形で無い、道路に接していない、などのマイナスポイントがある土地は、通常の路線価評価にマイナス補正をかけて評価します。



狭すぎて、建物も何も建てられないような土地は、評価が大幅に下がります。ただ、普通に住宅等で活用されている土地であれば、それほど影響しません」



墓地に面しているなど、周囲の環境でも評価は変わるのか。



「騒音や臭気、墓地・火葬場等の嫌悪施設により、土地の取引価額が低下していると認められる場合には、10%の減額が可能です。しかし、国税庁は明確な基準を示していません。



税務調査で、そういったマイナス要因は既に路線価に反映済みと言われて、否認されるリスクもありますので、入念に証拠を集めておく必要があるでしょう。



また、面白い評価減のひとつとして、埋蔵文化財包蔵地というものがあります。都心にもまだまだ遺跡が発掘される可能性のある地域が数多くあります。



そのような地域では、不動産開発の際に試掘が求められるのですが、その試掘費用相当額を減額できる可能性があります。埋蔵文化財包蔵地マップは市区町村の役場で配布されていますので、ぜひ確認してみてください」



足立税理士はこのように締めくくった。



【取材協力税理士】


足立仁(あだち・じん)公認会計士・税理士


東京大学経済学部卒業。税理士法人ファザーズ代表社員として、多くの資産家・企業経営者の顧問を務める。2013年より日本公認会計士協会東京会幹事。


事務所名:税理士法人ファザーズ


事務所URL:http://souzokuzei.or.jp/


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