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「炎上リスク」どこまで計算?サイバー藤田社長「激怒」ブログにみる企業広報のあり方

2014年10月03日 18:21  弁護士ドットコム

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なぜ社外に向けて過激な発信をしたのだろうか——。日本経済新聞電子版に掲載されたサイバーエージェント藤田晋社長の経営者ブログ「私が退職希望者に『激怒』した理由」が話題を呼んでいる。藤田社長は、重要な仕事をまかされていたのに会社を突然やめた従業員のことを非難しながら、「社長が怒っている」という噂が社内に広がるよう、意識的に「激怒」したのだと記している。


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このブログに対して、ネットでは「社員への個人攻撃を会社への警鐘にしようとしている点が危うい」「社員が辞めるのは自由なはずだ」と批判する声が数多くあがった。一方で、「日経新聞で罵倒されるかもしれないと考えれば、強力な抑止効果になるだろう」と肯定的に評価する意見もある。



従業員への批判を社内で発するだけでなく、メディアを使って、あえて「社外」にも発信する手法は、企業の広報戦略として効果的といえるのだろうか。コンサルティング会社でコミュニケーションのマネジメントに取り組んだ経験をもつ清水陽平弁護士に聞いた。



●「炎上リスク」を考慮しないはずがない


「『メディアに出れば宣伝になる』というのが、メディアに取り上げられたり、その打診を受けたりした企業が考えることだと思います。しかし、きちんと考えている会社は、メディアに出ることのネガティブな影響も含めて考え、それがブランディングにとってプラスなのかを検討するのが普通です。



上場企業であればステークホルダーが多数いるので、そのような検討をする必要性が相対的に高くなります。特にサイバーエージェントほど大きい会社であれば、メディアにどのように打ち出していくのかということを、IR(投資家向け情報)のほか、社内・グループ広報の観点からも考えているのではないかと思います」



では、今回の記事も「会社としての発信」と考えていいのだろうか。



「問題の記事は、日経電子版の『ビジネスリーダー』という項目の『経営者ブログ』に出ています。ブログなので藤田社長が個人的に書いて出したのかとも思えますが、会社の代表が対外的に発信していると受け取られる以上、広報担当のチェックを通過しているとみるのが、普通ではないでしょうか。



そうすると、この内容は『会社として発信しておきたいことだ』という判断をしたのではないかと想像できます。そのような判断をする際、『炎上リスク』を考慮しないということはあり得ないでしょう。



ブログを見ると『あくまで経営者目線からですが』などと断りを入れていることからすると、批判があり得ることや、炎上可能性があることも十分予想していたと思われます」



●退職した元従業員が特定される可能性も


しかし、結局は「炎上」してしまったのではないか。



「たしかに炎上しているわけですが、株価に大きな悪影響は出ていないようです。炎上は一般的には『リスク』といえますが、この件では炎上の顕著な影響は『ない』といえる状況になっています。



決して賛同を得たいために記事を書いたわけではないと思われるので、サイバーエージェントとしての何らかの目的は達成していると見ることができます。



このように分析していくと、単に感情的に書いたというわけではなさそうだなと思えます」



では、何の問題もないということか。



「名指しをされたわけではないですが、話の対象になった社員からすれば、たまったものではないでしょう。サイバーエージェントの社員や関係者からすれば、それが誰のことなのかということは分かる可能性が高く、社会的評価の低下もあり得ると思うので、名誉権侵害と言い得る余地はあると思います。



しかし、書かれている内容に実際と大きく異なるところがないとすれば、違法性阻却事由(行為を正当化する根拠)を満たす可能性も高く、実際に損害賠償請求等をすることは難しいでしょう。



そのため、記事で指摘されている内容がどこまで真実かという点で結論は変わり得ますが、法的リスクも小さいということになると思います」



藤田社長のブログは「社外」で大きな話題になったが、「社内」に対しては、いい影響を及ぼしたのだろうか。コミュニケーションのあり方を考えるうえで、興味深いケースといえそうだ。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
IT法務、特にインターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定に注力しており、平成24年には東京弁護士会の弁護士向け研修講座の講師を担当し、26年にも同様に講師を担当している。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp