私が勤めていた頃のワタミでは、サービス残業が当たり前の文化でした。それが多くなると、当然給料に響くようになります。さらに正社員ということで、社会保険やら厚生年金やら諸経費が引かれると、手取りがアルバイト従業員より少なくなるのです。
もちろん、アルバイト全員より下回るというわけではありませんが、週5~6日、1日8時間超が基本の主力アルバイト従業員には、ふつうに手取りで負けていました。天引きの関係上、仕方ないことかもしれませんが、店の人件費を無理に抑制させられる「ノーコン」の関係もあるので、内心は穏やかではありませんでした。(文:ナイン)
ファミレスでもタイムカードを切ってから「タダ働き」
この話をいつものように、ファミレスに勤めていた友人に話すと、やはりその店でも社員にしわ寄せが行っていたそうです。
「ウチはさすがにバイトを下回ることまでなかったけど、確かに同じくらいにはなるときがあったな。『待機ラスト』ってのもあったし…」
友人の勤めていたファミレスでは、社員はタイムカードを切って控室で「待機」し、店が忙しくなると呼び出されて無給で働かされていました。それだけでも悪質なサービス残業ですが、問題はそれだけではなかったのです。
「深夜の給料と残業代って、賃金が割増しになるでしょ? それがあるから社員のシフトを組む時は、シフト上は8時間労働にするのさ。でも実際は、開店から閉店までが基本で、タイムカードをつけていいのはマックス8時間。午後の10時に仕事を一度あがって、閉店の2時まで待機し、閉店作業することもあったよ」
時間外労働と22時以降の深夜労働は、ともに賃金が25%割増しになります。それを避けるために、待機状態のまま「ラスト(閉店)」まで働くことが横行していたなんて…。これには私も絶句しました。なかなかあくどいことをするなと。さらに彼は、こんなことも言っておりました。
「ウチは売上には厳しく言われなかったけど、生産性には厳しかったよ。人を使いすぎると上司がうるさいからね」
会社を儲けさせるために現場が「辻褄あわせ」
外食チェーンでいう「生産性」とは、要するに店の売上に対して使っていい人件費のこと。低い売上で多くの従業員を使うと利益を圧迫するため、売上と同じくらい重要なものです。
つまり会社や経営者が儲けるために、現場で違法な「辻褄あわせ」を強要されているわけです。「サービス残業」が基本で、手取りがアルバイト以下。さらに社員だからといって、責任も重い。こんな職場じゃ、どうしても魅力に欠けます。
「最近の若いモンは、つらい仕事をやりたがらない」
という声も聞かれますが、こんな状況だと「そりゃそうだろ」と思います。
社員の責任を軽くするためには、アルバイトに重い責任を負わせるしかありません。そこで最近問題になっているのが「ブラックバイト」というやつです。リーダーなどの名の下に、学校に行けなくなるほど無理なシフトを入れられ、残業代も支払われず、体調を崩してしまうこともあるようです。
外食チェーン全てがこのような実態があるとは限りませんが、こういった店舗が確かにあります。悪い噂ほどすぐ広まりますから、外食チェーンのブラックな労働環境のイメージは、なかなか払拭できないでしょうね。
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