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仕事を辞めずに、成長企業の経営に「サンカク」できる――リクルートキャリア秋山氏が描く「新しいキャリア像」とは?

2014年09月30日 19:40  キャリコネニュース

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いまの仕事は辞めたくないが、新たな経験を積んでみたい――。そんなふうに考えているビジネスパーソンはいないだろうか。9月3日から始まった「サンカク」は、そんな人向けのウェブサービスだ。

「人と仕事との出会い方を変える新規事業アイデアについてのディスカッションにぜひサンカクを!」

「『フィリピン留学』を日本社会に普及させるための戦略立案・アイディア出しのディスカッションにサンカク求む!」

現在はまだベータ版だが、すでに12社(9月17日現在)の成長企業が「いまの仕事は辞めなくていいから、知恵を貸してくれ!」と呼びかけている。

この事業に、どんな意図が込められているのか。「サンカク」を担当するリクルートキャリア・次世代プラットフォーム統括部の秋山貫太氏に聞いてみた。

普段の仕事では感じられない「リアルな経営の悩み」に直面

――サービス開始から3週間ほど。どんなユーザーが登録していますか?

秋山: 30歳前後の、比較的大手企業に勤めるビジネスパーソンが多いです。いまの仕事にも比較的満足しているが、もう少し成長したい。そんなユーザーが多い印象です。

必ずしも「会社に不満」「組織がイヤ」という動機ではなく、「いまの会社で活躍しながら外で活動してみたい」という欲求が高く、提供できる経験やナレッジを持っている方が多いですね。

私の周囲でも、大手企業で5年くらい頑張ると、「今後のキャリアどうしよう」とか「今の環境ではマネジメントや経営に携われない」といった声が多く聞こえます。そういうギャップを埋めたいというのがサービス開発の起点なので、想定どおりのユーザー層が集まっていると思います。

――ビジネスパーソン個人にとって、サンカクを利用するメリットについて教えてください。

秋山:メリットは主に2つあります。1つは「腕試し」。「自分の経験と知識を社外の場で試してみたい」「社外で自分を必要としてくれる人や組織に貢献したい」という欲求を叶えてもらう使い方です。

もう1つは「成長の場」。他の会社の経営者とディスカッションすることで、普段の仕事では感じられないリアルな経営の悩みや事業課題に触れることができます。ディスカッションを通じて、「自分の経験ってこんなところで生きるんだ、喜ばれるんだ」と自己認識できます。

それとは逆に、自分に不足している知識やスキルも確認できる。そうして自分の立ち位置が確認できると、すぐに「転職する」「起業する」わけでなくても、自分のキャリアを考えるきっかけになると思います。

日本はまだ「転職ありき」の世の中ではないので、キャリアに対しても慎重な人が多い。いまの組織にいると「自分が積みたい経験が積めない」「就きたいポジションに就けない」という人も、今までは自社で頑張るしかなかった。「サンカク」ではそういう人に対して、社外で経験を積むきっかけを提供したいと思っているんです。

→(次頁)「オープンイノベーション」を求める企業にニーズ

「オープンイノベーション」を求める企業にニーズ

――逆に、企業側にはどういうメリットがあるのでしょうか?

秋山:世の中的には、自社内だけで課題を解決しようとするのではなく、広く外部の知見を活用していく「オープンイノベーション」の流れがありますよね。まさに企業側のメリットはそれで、サンカクを通じて外部のナレッジを使える、アドバイスを受けられるところにあります。

コンサルタントや専門家を入れるほど緊急の課題ではないが、新しい事業課題・経営課題について、業界で活躍するビジネスパーソンに知恵やアイデアを求めたい。そういう経営者や事業担当者が、各界のビジネスパーソンに出会える場になればと思っています。

――企業側から課題解決を求められるわけではないんですね。

秋山:はい、サンカクはあくまで「単発のディスカッション」をマッチングする場として捉えていますので、「ものすごい提案をしてくれ」とか、「効果的なコンサルティングをしてくれ」といったものではないんです。

当社でも掲載時に、そのコンセプトを丁寧に説明します。そのうえで「サンカク」してもらっていますので、双方の期待値にズレが生じにくくなっています。期待値の高すぎる、緊急性の高いようなテーマは設定されないように、丁寧に募集ページを作っています。

――報酬はもらえるのでしょうか?

秋山:ユーザーにも企業にも、報酬は発生しません。さらに言えばベータ版なので、企業側の掲載自体も無料なんですよ。

もちろんディスカッションのあとで双方が合意して、パートナー契約などを結べば別ですが、「サンカク」はそこまで介在しません。あくまで、無料で単発のディスカッションをマッチングする場として、サービスが完結しています。また、ユーザーもそもそも、報酬を求めて来ていません。

だからといって、ただ「お茶しようよ」というようなすごくカジュアルな話をするわけではないんです。そこはビジネスなので、経営課題とか事業課題とかのディスカッションのテーマを設けて、あまり堅苦しくならずに議論しましょうということです。

選択肢が増えて、個人が最適な働き方を選べる時代に

――現在、参加企業からは、どんな声が多いですか?

秋山:サンカクを「クオリティの高い場」として維持してほしいということですね。今後規模を拡大していっても、その価値を下げないように、良いビジネスパーソンとマッチングするように運営してほしいと。それが維持されれば、結果的に収益も付いてくるのでは、と想定しています。

リーン・スタートアップという言葉もありますが、いまは「サンカク」という場の価値を上げることが先決。ユーザーや企業からアイデアやフィードバックをいただき、それをスピーディーに改善していくことに注力しています。

――サンカクがわざわざ「仕事を辞めずに」と打ち出したのはなぜですか?

秋山:この数年「プロボノ(専門家によるボランティア)」や「パラレルキャリア」といった言葉が世の中に出てきている中で、「サンカク」のようなサービスは「社会の要請」という側面もあると思います。

日本の現状では、副業というと必ず「現職がおろそかになるのでは」という懸念がつきまといますよね。そこで「サンカク」では、あくまで「ライトな単発のディスカッション」にサービスのコンセプトを絞っています。

世の中には業務委託とか、プロジェクト単位でのマッチングサービスもありますが、それだと副業禁止規定が気になって活動できないユーザーもいます。

「サンカク」のユーザーに期待するのは、「まずは現職で活躍してほしい」ということ。そのうえで「社外でも活躍してほしい」。その両立が負担にならないようにサービス設計をする必要があるなと、常に考えています。

――日本人の働き方も、少しずつ変わり始めているように思えます。

秋山:新しい働き方が増えていって、個人にとって「選択肢が増える」ということが大事だと思っています。

「こういう働き方があるべきだ」「新しい働き方をすべきだ」というのではなくて、あくまでも選択肢が増えて、その中で最適な働き方を個人が選べる時代になればいいなということです。最近のトレンドを見ると、そういうふうに変わっていくのではないかと思いますね。

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