最近の就活生の最大の関心事は、ブラック企業に入らないことなのだとか。そんな今どきの学生に向けて「『社員を使い捨てにする会社』の見分け方」をまとめた記事が、ネットで話題になっている。指南しているのは、東洋経済HRオンライン編集長の田宮寛之氏だ。
見分け方のポイントは「面接」と「初任給」、それに「離職率」だ。社員を使い捨てにする会社は、面接担当者の感じがよく、1~2回の面接で内定が出ることがあるという。短期間酷使して、使い物にならなければ辞めさせればいいと思っている企業は、簡単に内定を出すからというのがその理由である。
「月30時間超の残業」も働きすぎの可能性指摘
初任給については「初任給が30万円を超えていたら、おかしいと考えてください」とし、そのような企業は業務が苛酷であるか、長時間残業などを前提として高額の初任給をうたっている可能性があると忠告している。
離職率については、3年以内の退職者が3割を大きく超えたり、1年以内の退職率が5%を超えたりするような企業には注意とのこと。平均勤続年数が長ければ「働きやすい会社であると判断できます」。
その他、残業が月30時間を超える企業は「残業が多い」、有休消化年日数は平均値の約10日より極端に少ない会社は「社員をこき使う会社」かもしれないという。
これにはネットで、賛同するコメントがあがっている。就活を応援する元人事課長を名乗るツイッターアカウントは「なかなか、いい記事です」と評価。把握することが難しい「3年離職率」については、
「厚労省あたりが音頭を取って統一基準を作り、採用活動を行う企業は初任給などと並べて提示する流れになればいいと思う」
と同調する意見もあった。
その一方で、異論もあがっている。入社数年目で10日間の有給休暇が取れなかったり、残業が月30時間を超えたりするのはそれほど珍しいことではなく、そんなことは大事な企業選びの基準になりえないというのだ。
終身雇用の前提なければ「高給」ありうるか
「クリエアナブキ(就職支援)」氏はツイッターで、「平均勤続年数が長いと働きやすい会社」という捉え方に対し、大きな誤りだと指摘する。
「若手が定着せず古参の社員ばかりの会社は平均勤続年数が長くなります」
全体的に終身雇用を前提としたような書きっぷりに、「10年は認識が遅れてる」という厳しい声も。確かに少子化が進む中、自分が定年になるまでに会社がいまと同じような状態で維持されている保証は、ほぼないといっていい。
「ITはそもそも終身雇用の前提がない以上(初任給は)高く設定されないと生き抜けない」
という指摘もある。実際、いわゆる「ITベンチャー」と呼ばれる会社は、初任給が30万円を超えているところも少なくない。今年4月放送のTBS系「アッコにおまかせ!」では、そんな初任給の高い企業を紹介していた。
「ディー・エヌ・エー(DeNA):38.7万円、グリー:35.0万円、サイバーエージェント:34.0万円、楽天:30.0万円、クックパッド:30.0万円、ドワンゴ:28.0万円、ミクシィ:28.0万円、カカクコム:22.3万円」
このような企業では、従来の新卒採用の常識にとらわれず「能力に応じて」金額が提示されるため、新卒の中でも特に能力の高い人材が集まっている。中には年俸600万円以上の「スペシャリスト」コースを設ける会社もある。
いかに「会社に使い捨てされない人材」となるか
もちろん、こういう会社の仕事は決してラクなわけではない。しかし、この条件に当てはまり、終身雇用を前提としていないからといって「社員を使い捨てにする会社」というレッテルを貼るのはいかがなものか。
使い捨てにしない会社探しとともに「会社に使い捨てされない人材」になることも大切だ。経営コンサルタント会社に勤める30代の読者からも、
「こういう事に注力している限り、どこへ行っても使い捨てられたと感じてしまうと思う」
というコメントがあった。より重要なのは、自分のキャリアを自分なりに考えながら第一歩を選択することであり、「会社が何をしてくれるのか」だけを考えていても限界があるのではないか。
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