シンガポールGPの週末、ほぼ毎日のようにFIA公式記者会見、あるいはパドックのどこかの会見で話題に挙っていたテーマがある。それは「3台エントリー計画」だ。
これは、1チーム3台のマシンをエントリーするという話である。2014年限りでいくつかのチームが消滅した場合に、その埋め合わせを行う必要が生じるかもしれないからだ。現在、消滅する可能性があると言われているのはケータハムとマルシャ。さらにザウバーとロータスも「いつ消滅してもおかしくない」(某レース関係者)という状況だ。
なぜチーム数が減少すると、1チームあたりの出場台数を増やさなければならないのか。それはF1開催を各主催者と交渉しているフォーミュラ・ワン・マネージメント(FOM)が、契約で「20台以上のエントリー」を約束していると言われているからだ。
そのFOMの代表を務めるバーニー・エクレストンも、シンガポールGP直前に開かれたジョニー・ウォーカーの発表会で「3台エントリー計画」に言及した。しかも、その詳細は「あと2、3グランプリ後にわかるだろう」とまで語っている。
それが本当であれば、XデーはロシアGP後あたりとなる。ただし、もう一方でこんな意見もある。「バーニーの3台エントリー計画はいまに始まった話ではなく、もう何年も言われてきたこと。でも、結局導入されなかった。だから、今回も実現するとは思えない」(某イギリス人ジャーナリスト)
確かにポイントの望みがない数チームが消滅して、トップチームが3台目を走らせれば、トップチームは優勝するチャンスがさらに増え、ファンもより激しい優勝争いを見ることができそうだが、物事はそんなに単純ではない。3台目を走らせるには、より多くの予算が必要となり、それはトップチームでも簡単に捻出できる金額ではないからだ。メルセデスのトト・ウォルフ(エグゼクティブディレクター/ビジネス)によれば、その金額は3200万ユーロ(約44億円)と試算されている。これだけの金額を出しても、3台目を走らせたいというチームはフェラーリ、レッドブルぐらい。試算したメルセデスも走らせる気があると考えられる。
もうひとつ気になるのは、もしエクレストンが言うとおり「2、3グランプリ後にわかる」というのなら、来年消滅するチームもその時期に判明するのではないかということだ。果たして、それはどのチームなのか。F1はシーズン終盤に向けて、タイトル争いだけでなく、生き残りを賭けた戦いも過熱している。
(尾張正博)