2014年09月29日 11:01 弁護士ドットコム
スマートフォンやタブレットの「充電ケーブル」の接続部分が異常に熱くなり、ときには発火する。そんな事故があいついでいるとして、製品評価技術基盤機構(NITE)が7月下旬、注意を呼びかけた。
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NITEによると、こうした充電ケーブルの接続部分(コネクター)が発熱・発火する事故は、2009~2013年度の5年間で48件発生した。ハンダ付け不良など、製品に起因して起こる事故のほか、使用者の誤った使い方によってコネクター内部が変形して、ショートする事故もあったという。
異常発熱や発火によって、布団がこげたり、やけどを負ったという被害が報告されている。今後、スマートフォンの普及にともなって、こうした事故も増えるおそれがある。さらには、火災などの大きな事故も発生するかもしれないが、そのような場合、責任は誰にあるのだろうか。西田広一弁護士に聞いた。
「製品に原因があって発熱・発火した場合は、『製造物責任(PL)法』でいう欠陥(製造上の欠陥)に当たります。
スマートフォンが発熱してやけどを負ったり、発火によって家具などが焦げてしまった場合、そのスマートフォンは安全性を欠いており、明らかに欠陥があると言えるでしょう。したがってメーカーには、やけどの治療費や家具の修繕費などを賠償する責任があると考えられます。
なお販売店にも、欠陥のない代わりの製品を、購入者に提供する責任があります」
このように西田弁護士は解説する。
では、使い方を誤ったせいでコネクター内部が変形し、ショートなどの事故が起こった場合はどうだろうか?
「これは、購入者が誤った使い方をしたために生じた事故ですから、原則として購入者に責任があり、販売店やメーカーに対して損害賠償責任を追及できません。
ただし、使い方が複雑であるといった理由で製品を誤って使う人が多い場合、メーカー側は事故が起こりやすいことを想定して、安全対策をしておくべきでしょう。したがって、もしメーカーが安全対策を怠っていたと考えられる場合は、責任を問える可能性があります」
スマートフォンのコネクターには、ほこりや液体が入りやすく、そういった異物のせいでショートすることもあるようだ。異物侵入によって起こった事故の責任は、誰にあるのだろうか?
「異物の侵入が、通常の使用や保管の中でかなりの確率で起こりうるなら、メーカーはそれを考慮して安全対策をしておくべきと言えます。したがって、メーカーの責任を追及できるでしょう。
一方、異物の侵入が通常の使用や保管の中でほとんど起こりえない、いわば不可抗力といえる場合は、メーカーが安全対策をすることは難しいでしょう。したがって、メーカーの責任は問えないと考えられます」
一歩間違えれば、大事故にもつながりかねないスマートフォンの発熱・発火。くれぐれも使い方には気をつけたいものだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
西田 広一(にしだ・ひろいち)弁護士
1956年、石川県小松市生まれ。95年に弁護士登録(大阪弁護士会)。大阪を拠点に活動。得意案件は消費者問題や多重債務者問題など。大阪弁護士会消費者保護委員会委員。関西学院大学非常勤講師。最近の興味関心は、読書(主にビジネス書)、クラウドサービスなど。
事務所名:弁護士法人西田広一法律事務所
事務所URL:http://law-nishida.jp