2014年09月27日 11:21 弁護士ドットコム
職場で手軽にお菓子を買えるユニークなサービス「オフィスグリコ」。高さ40センチほどの可愛らしいボックスに、グリコのお菓子が常時10種類ほど入れられている。備え付けの集金箱に100円を入れて、お菓子をひとつ持っていくという仕組みだ。
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東京都内のIT企業で働くMさんは、そんなオフィスグリコについて、悩んでいることがあるという。商品の減り具合と回収金額が合わない――つまり、お金を払わずにお菓子だけ持って行ってしまう社員がいるというのだ。
オフィスグリコは社内の8カ所に設置されているが、最近は不足金額が4割におよぶボックスもあるという。不足金額は会社側が負担しているということだが、その金額もばかにならないそうだ。
社内には、「誰も見てないからしょうがないのでは?」「個々人のモラルの問題」という意見もある。しかしMさんは、こうした行為は犯罪ではないかと考えている。お金を払わないで「オフィスグリコ」からお菓子を持っていく行為は、犯罪なのだろうか。東山俊弁護士に聞いた。
「結論から言うと、オフィスグリコから勝手にお菓子を持ち去った人には、グリコを被害者とした『窃盗罪』が成立し、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります」
窃盗とは「どろぼう」のことだ。ところで、なぜ被害者は「会社」ではなく、「グリコ」なのだろうか。
「それは、オフィスグリコの中身を管理しているのが、『グリコ』だからですね。
(1)オフィスグリコでは、グリコが設置したボックスの中にお菓子が入れられています。
(2)そのボックスには、グリコの商品であることが明示されています。
(3)グリコのスタッフは、定期的に中のお菓子を確認しています。
こうした運用からすると、グリコが中のお菓子を管理・監視しているといえ、グリコが中のお菓子を支配していると認められます。
こうした状況を、法律の専門用語で『占有している』といいます。窃盗罪は、ほかのひとが『占有しているもの』を勝手に持ち去るという犯罪です」
Mさんの会社は、不足金額をグリコに支払っているということだが、お菓子を勝手に持っていった人は会社に対して責任を負わないのだろうか?
「もちろん、勝手に持っていった人は、お金をグリコに支払わなければなりません。
今回の場合、会社がグリコに対して差額分を補てんしていたということですから、設置先の『会社』に対して損害を賠償することになります。
意図的にお金を払わずお菓子を持ち去るというのは、立派な『窃盗罪』ですから、懲戒の対象になっても文句は言えません。金額の大小にかかわらず、厳しい処分が科される可能性もありますよ」
東山弁護士はこのように注意を呼びかけていた。「誰も見てないし・・・」と安易な気持ちでお菓子を持ち去ったりすれば、想像以上に大きな代償を支払うことになるかもしれない。
【取材協力弁護士】
東山 俊(ひがしやま・しゅん)弁護士
東山法律事務所所長。大阪弁護士会所属。家事事件はもちろん、一般民事事件や刑事事件も幅広く取り扱っている。
事務所名:東山法律事務所
事務所URL:http://www.higashiyama-law.com/