2014年09月26日 15:31 弁護士ドットコム
想定される時価総額は1兆6000億円、今年最大の上場に――。東京証券取引所は9月上旬、リクルートホールディングスの株式上場を承認したと発表した。10月16日に上場する。
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日本経済新聞の報道によると、同社は「人材情報・紹介分野で世界一になること」を目標に掲げ、国内外での新株発行などで最大1000億円を調達し、海外でのM&AやIT人材の確保を進めるという。
今年の新規上場は70~80社と7年ぶりの多さになる見込みだという。上場、すなわち「株式公開」とは、どんな仕組みで、どんなメリットがあるのだろうか。山本邦人税理士に聞いた。
「株式公開とは、文字どおり株式を証券市場で公開することを言います。それにより投資家は、証券市場において株式を自由に売買することができるようになります。
公開した企業の業績が良くなりそうであれば、株価や配当の高騰を見込み、株式の購入を希望する投資家が増えます。その結果、需要と供給の関係で株価は高まり、企業は増資などにより、多くの資金を調達することが可能になります」
資金調達以外にどんなメリットがあるのだろうか。
「『知名度の向上』があります。信用力が拡大し、新規顧客の増加や販路の拡大が見込めます。また事業提携が有利になる、従業員の士気が高まる、優秀な人材を確保しやすくなる、といった効果も考えられます。
また、『決算の迅速化・適正化』も挙げられます。上場した場合、監査法人(公認会計士)の監査が求められるので、会社の実態把握が迅速かつ正確なものとなり、財務情報に信用が与えられます。
さらに『内部管理体制の充実』もあるでしょう。株式公開の要件として、規程の整備や運用が求めれれます。それにより不正や誤りが起こりにくくなります。
『リーガルリスクの回避』も理解しておきたいところです。上場の場合、コンプライアンス(法令遵守)の重要性が高まるため、結果としてリーガルリスクを低減する方向に向かうでしょう」
企業自体のメリットは理解できたが、経営者や従業員にとってはどうなのか。
「『創業者の利益の確保』につながります。株式公開は創業者個人の会社であったものを、他の投資家に売却することを意味します。その結果、創業者は、創業当初のリスクの対価として株式の売却益を得ることができます。
また、『従業員のモチベーション確保』も促すでしょう。従業員持株会を通じて従業員が自社の株式を所有している場合、市場でその株式を売却することができます。また一定金額で株式を取得する権利(ストックオプション)を付与することで、従業員も株式公開前の金額で取得でき、公開後に利益を得ることができます。従業員が株式を持てば、株価を高めたいという意識が働き、経営者の意識とベクトルが一致しやすいというメリットもあります。
外部の利害関係者という点では、『ベンチャーキャピタルの出口確保』にもつながります。ベンチャーキャピタルは株式公開により投資を回収できるからこそ、公開前の企業に資金を提供します」
メリットだらけのように見えるが、企業として、さまざまな利害関係者に対する責任が、より重くなるともいえる。今回上場する「リクルートHD」も含めて、経営者の力量が本格的に問われる局面になるだろう。
【取材協力税理士】
山本 邦人(やまもと・くにと)税理士
監査法人にて経営改善支援業務に従事した後、平成17年に独立。現在は中小企業を中心に160件を超えるクライアントの財務顧問として業務を行う。税金面だけではなく、事業の継続的な発展という全体最適の観点からアドバイスを行う。
事務所名:山本公認会計士・税理士事務所
事務所URL:http://accg.jp
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