2014年09月26日 14:51 弁護士ドットコム
AKB48グループの「総監督」として約300人のアイドルたちを率い、ライブや握手会、テレビ出演などで活躍しているAKB48の高橋みなみさんが最近、「激やせ」したと話題を呼んでいる。
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9月10日に放送されたラジオ番組「アッパレやってまーす!」(MBSラジオ)で、共演していた西川貴教さんから「(血液検査の結果で)栄養失調だと言われたんでしょ」と暴露され、高橋さんは「栄養、足りてなかったですね」と認めた。身長は148.5センチと小柄だが、ピーク時は体重42kgくらいだったのが今では37kgまで減ったという。
高橋さんは「食にあんまり意欲がなくて、1食半ですんじゃう」「16時くらいで1日のご飯終わっちゃいます」と話している。多忙による疲労やストレスがどれだけ影響しているのか不明だが、このままだと体調不良につながるかもしれない。芸能事務所はアイドルの体調管理に責任を負わないのだろうか。芸能関係の法律問題にくわしい太田純弁護士に話を聞いた。
「事務所が責任を負う可能性はあります。
たとえば、アイドルと事務所が結んだマネジメント契約に、健康管理に関する規定があれば、事務所はそれに応じた義務を負います。
また、契約にそうした特約が含まれていなくても、事務所に責任が生じる場合はあります」
それは、どんな場合だろうか?
「それは、アイドルが『労働者』とみなされるようなケースです。
アイドルは独立した事業者として、マネジメント契約を結ぶわけですが、実際の働き方は『労働者』に近いというようなケースがあります。
アイドル本人に仕事を拒否する権限があるかどうか、事務所の指揮監督権限がどれほど強いか、報酬はどのように配分されているのかなど、さまざまな観点から総合的に判断して、『実質的には労働者である』とみなされる場合があるのです」
そうなると、どうなるのだろうか?
「実質が労働者なら、契約の名称にかかわらず『雇用契約』が結ばれていると判断できます。そうすると、さまざまな『労働法』のルールが適用されることになります。
たとえば、労働安全衛生法に定められている『健康診断』を受けさせる義務が、事務所には生じます。さらに、状況によっては、医師などの意見を聴き取る義務や、労働時間を短縮する義務も生じるでしょう」
逆に言うと、そうした状況でなければ、事務所には責任がないのだろうか?
「芸能事務所とアイドルは、『マネジメント契約』を結びます。事務所は、その契約に基づいて、アイドルに対する『安全配慮義務』を負います。
たとえば、体を動かすバラエティ番組に出演させる際には、事務所はアイドルがけがをしないように配慮をしなければなりません。
しかし、こうした安全配慮の範囲を超えて、さらに一般的・日常的な健康管理、健康配慮の義務を負うとまでは言い切れません」
日常的な体調管理は、自分自身で管理すべき部分もあるということだろう。
「さらに、事務所の法的責任を追及するためには、体調を崩したり、病気にかかった原因がアイドル本人の不摂生ではなく、事務所の義務違反によるものだと、因果関係をはっきりさせる必要がありますが、それは非常に難しいことです」
そうすると、アイドルの体調不良について、「事務所に責任をとれ」というのは、簡単ではなさそうだ。
「そうですね。一方で、若いアイドルのマネジメントという観点からは、無理をさせずに長い目で育てていくことも大切です。法的責任とは別に、アイドルの将来性や健康にも配慮した優しさを、事務所には期待したいですね」
太田弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
太田 純(おおた・じゅん)弁護士
訴訟事件多数(著作権、知的財産権、労働、名誉棄損等)。その他、数々のアーティストの全国ツアーに同行し、法的支援や反社会的勢力の排除に関与している。
事務所名:法律事務所イオタ
事務所URL:http://www.iota-law.jp/