従業員を酷使するブラック企業が社会問題になる中、働きやすい「ホワイト企業」の求人情報だけを紹介するサービスが登場した。大阪に本社を置く人材会社プロシーズが、9月から始めたもので、その名は「ホワイト求人」だ。
人材の定着率や経営の安全性、ワークライフバランスなど、同社が設けた20項目以上の基準からなる「ホワイト企業」診断を行い、100点満点中50点以上を獲得した企業の求人のみをサイトに掲載する。
離職率や残業手当で評価。認定は「4社に1~2社のみ」
診断はプロシーズのスタッフが、求人企業の採用担当者にヒアリングする形で実施する。同社担当者によると、「1年以内の離職率」が3%以内だと最高点の10点で、5%以内だと8点。10%以内だと4点、10%を超えると0点になる。
次に配点が高いのが「残業手当の有無」。完全支給だと最高の7点、支給上限額が設けられているなど条件付き支給であれば4点、定額の「みなし残業代」ならば2点、残業代が全く出ないなら0点だ。
同様に「月間の残業時間」についても、5時間以内が最高で7点、15時間以内4点、25時間以内2点、それを超えると0点となっている。他にも「有休の取得日数」「女性管理職の多さ」などの項目が並ぶ。「風通しのよさ」は、社長室の有無で判断するようだ。
プロシーズがこれまで「ホワイト企業」と認定したのは13社。審査を通るのは「4社に1~2社程度」だといい、基準に満たない企業は、担当者が「進退をかけて」求人掲載を断っているという。
「中小企業や創業間もない企業だと、従業員一人ひとりの仕事量が多く、認定されないケースがよくあります。ある程度大きい企業の方が、環境も整っているので認定されやすい傾向があるようです」
介護業界でも「労働環境に気を配る会社はある」
「働きやすさ支援で受賞あり」という項目もあり、認定1つにつき10点加算される。現時点での最高得点70点を獲得したのが、大阪でauの携帯電話を販売している会社だ。厚労省が子育てサポート企業と認定する「くるみんマーク」などを取得し、「女性活躍度」でも高い評価を受けた。
過酷な労働環境のイメージもある介護事業者も認定されている。51点とギリギリの認定ではあるが、平均勤続年数でA評価を受け、「5期連続黒字」であることも経営面で評価されたようだ。前述のホワイト求人担当者は、狙いをこう話す。
「介護業界にも、労働環境に気を配っている会社もあります。マイナスイメージが強くて、人材の獲得が難しい業界でも、診断を受けて基準をクリアしていれば、ホワイトであることをアピールすることができるので、積極的に活用してもらいたい」
ただし、現時点では改善点がないわけではない。現状の診断方法では残業代が全く出なかったり、有休が全く取得できなかったりしても、他の項目で50点以上獲得すれば「ホワイト企業」として認定されてしまう。
この問題をクリアするために、プロシーズでも「どれか一つの項目で0点になったら一発で不合格にしたり、点数をマイナスにしたりすることも検討中」という。
「ホワイト企業認定マーク」の発行も視野に
このほか、「社員の仲の良さ」などの主観的な項目についても、採用担当者へのヒアリングだけでなく、従業員に直接アンケートをして調べる方法も検討している。
今後は「ホワイト企業認定マーク」の発行も視野に入れており、同社のほか採用コンサル企業や社労士事務所などが参加する任意団体「ホワイト企業認定準備室」を設立し、近日中に一般社団法人にする予定だという。
あわせて読みたい:明らかになったワタミの「過酷な労働実態」
最新記事は@kigyo_insiderをフォロー/キャリコネ編集部Facebookに「いいね!」をお願いします