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漫画『PLUTO』舞台化、森山未來と永作博美がアトム&ウラン役、振付はシェルカウイ

2014年09月25日 12:50  CINRA.NET

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『プルートゥ PLUTO』イメージビジュアル ©浦沢直樹・スタジオ ナッツ 長崎尚志 手塚プロダクション / 小学館
漫画『PLUTO』を原作にした舞台『プルートゥ PLUTO』が、2015年1月9日から東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーンで上演される。

『PLUTO』は、手塚治虫の漫画『鉄腕アトム』の『地上最大のロボット』をもとに、浦沢直樹とストーリー共同制作者の長崎尚志が執筆した作品。手塚プロダクションの許諾を得て、手塚眞の監修のもとで制作された同作は、2003年から2009年まで『ビッグコミックオリジナル』で連載された。

同作を初めて舞台化する『プルートゥ PLUTO』は、手塚治虫の思想と生涯を表現し、2011年のロンドン公演を皮切りに日本を含む10か国以上で上演されたダンス公演『TeZukA テ ヅカ』の振付を手掛けたシディ・ラルビ・シェルカウイが演出と振付を担当。シェルカウイが日本人の俳優のみによるストレートプレイを手掛けるのは、今回が初めてとなる。物語は、人間とロボットが共存する時代を舞台に、様々な葛藤を抱えながら、大量破壊兵器になり得るロボットたちを狙った事件の解決に挑む高性能刑事ロボットのゲジヒトやアトムらの姿を描く。

アトムを演じるのは、『TeZukA テ ヅカ』にも出演し、平成25年度文化交流使として今年10月までベルギーとイスラエルで活動を行っている森山未來。森山は、「『PLUTO』は以前から読ませて頂いていました。自身が敬愛する手塚治虫氏の作品を下敷きにしながら、浦沢直樹氏による大胆でそれでいて緻密なストーリー展開とキャラクター造形の新解釈に非常に興奮したことを覚えています。また、文化交流使の活動報告の1つとして『PLUTO』を日本の観客の皆様に提示できることを嬉しく思うと同時に、この作品のクリエーションが、1年を通じて変化してきたであろう自分自身を見つめる良い機会になればと考えています」と語っている。

また、悲しみを察知する能力を持つアトムの妹・ウランと、ゲジヒトの妻・ヘレナの2役を永作博美が演じるほか、アトムの生みの親・天馬博士役に柄本明、アトムとウランを見守るお茶の水博士役に吉見一豊、天才科学者・アブラー役に松重豊、ゲジヒト役に寺脇康文がキャスティングされている。

同作は、2015年2月6日から大阪・森ノ宮ピロティホールでも上演。チケットの一般発売は東京公演、大阪公演共に10月25日からスタートする。

■シディ・ラルビ・シェルカウイのコメント
「ロボットは人間と同じなのか」。
手塚治虫さんの原作に描かれ、浦沢直樹さん達がさらに深められたこのテーマに対する私の答えは、Yesです。彼らは人間に奴隷扱いされているにもかかわらず、人類を救うために学び、人類より優れた存在であろうとします。彼らは、私たち人間が忘れてしまいがちな、相手の身になって考えることの尊さを、教えてくれるのです。
『PLUTO』は聖書レベルの強力な物語です。非常に政治的で、父子関係に焦点が当てられ、人間のロボットに対するアパルトヘイトを描いてもいる。あまりにも濃厚な内容を持つこの物語を、これまで私が培ってきたダンス、演劇、映画、そして日本での経験を総動員することで、舞台化できると確信しています。

■森山未來のコメント
ラルビが『TeZukA』に続き、日本の漫画を題材に選んで作品を創作する。とても有意義な試みになると信じています。大きなストーリーの流れや社会的なテーマを見せたかと思えば、次の瞬間には原子や分子の世界が繰り広げられたり......ラルビの作品は常にミクロとマクロを行き来しながら、その間に置かれた人間の存在を見せているような気がします。
『TeZukA』でのクリエーションを体験して以来、ずっと、もう一度ラルビと何かやりたいという気持ちは持ち続けてきました。今回はいわゆる「ダンス」ではなく、「演劇」をつくることになりましたが、きっと素敵なものができあがるはずです。ラルビの稽古場では、瞬発力も勇気も必要ですが、コミュニケーションを深めてきた今では、自分なりに、難しく考えすぎず、楽に居られる方法も分かってきたので、この『PLUTO』では、前回よりもっと深く、クリエーションに関わっていければいいなと思います。

■永作博美のコメント
実は、このお話を頂いた直後に、撮影中のセットの本棚に、原作の『PLUTO』が置いてあるのを見つけて。これはもう「出会いだな」と。原作はすごく面白かったですね。不穏な空気がずーっと流れていて、そのことがかえって「この世界を最後まで見届けたい」と思わせるんです。ラルビさんは、表現しようとするエネルギーにあふれていて、見たもの、感じたことを、誠心誠意、身体の奥底から、そのまま出そうとしていらっしゃるようでした。スッとした佇まいで、何にも害されることなく、自分の世界を創造している。その姿はとても素敵で、これからの稽古で私はどう動かされていくのか、どんなハードルの高い要求をされるのか、ちょっと心配にもなりましたが、それは覚悟するしかない。覚悟しちゃったら、もう、「これから何が起こるんだろう」って楽しみしかないです(笑)。

■柄本明のコメント
子供のころは、僕だけじゃなく、みんな『鉄腕アトム』を読んでましたよ。そりゃあ、そういう時代でしたから。「月刊 少年」を貸本屋で借りてね。でも、今回の舞台のように原作があるものに限らず、古今東西どんな作品も、何かをなぞって真似して作られていくわけでしょう。結局は、誰がどのように演出し、演じても、個人個人の身体を通れば、常にそれぞれに異なった新しいものが現れるはずだと思います。それが生きている、ライブということでもありますしね。芝居はほとんど自分のところの劇団(東京乾電池)にしか出ないから、どんな演出家、作品でも、僕には未知との遭遇です。とにかくやってみなくちゃ分からない。相手がいて、その時その時にやりとりしていくことですから。だからね、常に分からないはずのことを謎解きしようとしてる。僕はずーっと、そういうことをやり続けてるような気がしてます。

■松重豊のコメント
これまで自分から漫画を買ったことってほとんどなかったんですが、『PLUTO』は手塚さん、浦沢さん、アトム......っていうキーワードが目に飛び込んできて、思わず手にしたんです。1巻の最終ページにやられちゃいましてね。「これはすごいぞ!」と。その魅力はやはり、「普遍的な愛」や「人間とは何か」といったテーマが緻密に描かれているところでしょうか。とても器の大きな作品だと思います。このお話しを聞いて「え!『PLUTO』?しかも舞台で!?」と驚きました。でも、ラルビさんの作品『TeZukA』の映像を観て、このクリエイターとだったら何か新しいものが生まれる予感がしたんです。ラルビさんはきっと、一筋縄ではいかないアイディアを豊富に持っているはず。この年齢になると出来ない事が増えてくるけれど、「空を飛んでくれ」「走り回ってくれ」と言われたとしても(笑)、それに応えられるだけのものは用意していかなきゃいけないと思っています。

■寺脇康文のコメント
手塚治虫さんの作品はもちろん、浦沢直樹さんのマンガもすごく好きでよく読んでいましたから、このお話をいただいた時には「あの世界観をいったいどうやって?」と思いましたね。でもだからこそ、作品ができあがっていく過程を一緒に見ていきたいと思ったし、もともと自分が好きな作品の舞台版に携われるのは嬉しいことです。それに僕自身、「地球ゴージャス」という演劇ユニットをやっていますので、何か新しい刺激がもらえるかもしれないという期待もあります。『PLUTO』は、闘うロボットたちの姿を通じ、真っ正面から「暴力を用いない平和はないのか」と問いかける作品です。僕はこの舞台に参加することで、観客の皆さんにはもちろん、世界中に平和を思う強いエネルギーを見せたいです。それが今この作品に取り組む意義だとも思います。また、泣く、笑う、楽しい、悲しいといった感情は、人間なら誰もが持っているはずだけど、今の時代、せっかくの感情をうまく使えない人も多いですよね。だから、少なくともこの作品においては、ロボットの方が人間らしいと言えるのかもしれない。僕も特に意識して「ロボット」を演じるつもりはないし、そんな僕らの姿が、より多くの人に、初めて恋をした時の気持ちや大切な人を失った時の気持ち......そういった感情の大切さを思い起こさせることになれば、嬉しいですね。