ワタミが理念集「365日24時間、死ぬまで働け」という表現を削除した5月19日、渡邉美樹さんはFacebookにこう書いています。
「『完全週休二日宣言』も含めた『本意』が、創業者の理念でありワタミ理念集です。これまで、文章の一部だけを切り取り、一方的に誤訳され悪意を込めたイメージ攻撃を受けて参りました」
これは明らかに、世論の批判に対する反論ですが、それではワタミは本当に「完全週休二日制」が実現できていたのか。ずいぶん立派な言い訳をしていますが、私が働いていた4年間で「週休二日」休めた日など、いちどもありませんでした。
上司に直言して辞めていった新入社員たち
私が入社した2000年代末の採用担当者も、ワタミは「1日8時間労働」で、なおかつ「完全週休2日」と言っていました。しかし実際に働いてみると、現実は全く違いました。彼らはウソの説明をして、私たちを会社に迎え入れたのです。
採用担当者がウソを言っていたと気づいたとき、新入社員は現実を渋々受け入れる人ばかりではありませんでした。上司に対し「これはおかしい」と立派に直言する人もいました。
たとえば私の同期の男性は、入社2~3か月目で上司に「この労働環境はおかしい。入社前に説明されていた条件と全然違う。労働基準監督署に訴える!」と啖呵を切ったことがありました。これに対して直属の上司は、一種の開き直りとも取れる発言をしていました。
「外食チェーンなんだから、1日8時間労働なんて無理に決まってんだろ?」
結局、訴えは起こさず、やんわりと辞めざるを得ない状況に追い込まれたその同期は、入社半年で退職しました。
また、私の後輩の女性社員は「今日のシフトは12時まででしたけど、休憩に行ってないので1時間早く上がっていいですか?」と店長に言いました。労働基準法には1日8時間労働する場合、少なくとも1時間の休憩を与えなければならない決まりがあります。
彼女はその権利を行使しようとしたのですが、店があまりにも忙しくて休憩を取れずじまい。おそらく疲れ果てて、店長への抗議の意味も含めてこう言ったのでしょう。しかし彼女は逆に店長から叱責され、返り討ちにあってしまいました。
「いや、休憩行ってないって…。お前はバイトかよ!」
履歴書に傷がつくのを恐れて辞められない人たちも
この一件で、彼女と店長との雰囲気が悪くなりました。そんな労働環境に耐えられなかったのか、この後輩も入社半年ほどで退職しました。
おそらくその当時は、まだ人手不足になっておらず、就職氷河期だったこともあって、ウソをついてでも人を集めて「嫌なら辞めればいい」「ウチで働きたい人は他にもたくさんいる」という意識だったのでしょう。
しかし、働く側はそうはいきません。「なぜブラック企業だと気づいたら、すぐに辞めないの?」という人もいますが、今の時代、正社員として入社して、ものの半年や1年で辞めてしまうと、履歴書に傷がついてしまうのです。
「こいつは堪え性のないワガママなヤツなんじゃないのか?」
「何かあったらすぐに辞めるんだろう」
というレッテルを張られ、転職活動もスムーズにいかない人の話はいくらでも耳にします。
ワタミは「とりあえず採用して、残った奴だけ鍛えればいい」と考えているのでしょうが、採用担当者も入社させるからには、相手の将来の一端を担っているという自覚を持ってほしいものです。
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